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高校野球あれこれ 第17号

名勝負列伝-【3】箕島×浪商

 今年の夏の甲子園は近畿勢がベスト4を独占しましたが1979年の選抜も近畿勢がベスト4を独占しました。箕島、浪商、PL学園東洋大姫路です。準決勝で夏春連覇を狙ったPL学園は箕島に延長10回サヨナラ負け、東洋大姫路は香川にホームランをあびて撃沈しました。決勝は2年ぶりの優勝を目指す箕島と24年ぶりの優勝を目指す浪商の対戦。両チームの気迫がぶつかる決勝に相応しい試合になりました。 

「投げてるのは俺や 黙ってみとけ!という試合です。

 1979年4月7日 決勝 箕島(和歌山)8-7浪商(大阪)

 前年秋の近畿大会準決勝でも対戦していた両チーム、その時は11-4で浪商が勝利。決勝で尼崎北を7-3で破り、24ぶりの優勝をしています。主軸の香川選手をけがで欠きながら4試合で二桁安打と打ちまくりました。投手力は前年の選抜を経験している牛島が中心。新チーム以降14試合に登板し、完投10試合、4完封。防御率1.00(参加30校中8位)の成績。監督曰く「野球センス抜群」だそうです。

 大会前の広瀬監督の抱負は「昨年も1回戦の壁さえ破れば・・・と踏んでいたが、夏を経験した高松商のキャリアにやられた。甲子園では特に投手力に不安が残るものだが、今年はその心配がないだけ強みだ。このチームは近年にない好チームだと自慢できる。浪商監督として12年目になるが、確かな手ごたえを感じている。初戦さえ慎重に戦えば、道はおのずと開けようし、優勝にチャレンジしたい。」

 一方の箕島は3年連続の出場。一昨年優勝、昨年ベスト4と実績を残しての出場。こちらも昨年を経験(夏も出場)した石井-嶋田のバッテリーが残り優勝候補№1の呼び声でした。石井投手の新チーム以降の成績は17試合に登板し、完投9試合、6完封。防御率1.64とAクラスです。監督曰く「投手は水準以上」と全幅の信頼を寄せています。

 大会前の尾藤監督の抱負は「初出場の時(エースは元西武の東尾投手)ベスト4に残って、自チームが一歩リードしていると思ったのが気負いになって大宮工に敗れたことといい、昨年の選抜でもPL学園に快勝しながら福井商に足元をすくわれたのがいい薬になった。どうも゛準の字゛(準々、準決勝)がつくと選手にも力みから欲が出てくる。だから平常心で試合に臨みたい。二度優勝した時を思い起こすと、たしかに気負いがなかった。3年連続の出場だが、今年のチームは、一昨年優勝時の力があると思う。だがある程度の失点はやむを得ないだろう。それ以上の得点をあげれば良いわけだ」

 控えめなコメントを残す監督が多い中、両監督共に「優勝」という言葉を口にしています。

 

「投げてるのは俺や 黙ってみとけ!

 試合は前半、着実に得点した箕島ペースで進行しましたが、6回に浪商が反撃。牛島が遊エラーで出塁すると続く井戸がセンター前にヒット。ここで連日、殊勲打を放っている川端が期待に応え左中間に2塁打し2者生還。悪送球の間に川端が3塁へ進み。続く代打:森川がセンターへ犠牲フライを打ち上げ同点としました。

 同点に追いつかれた箕島はすぐさまに6回裏に嶋田宗がタイムリーを放ち突き放すが、勢いに乗る浪商は7回に椎名、山本、香川の長短打で逆転。場内は一気にボルテージが上がって来ました。          

 その浪商の勢いを断ったのが大会後半で当たりを取り戻した箕島の主砲:北野。北野は7回の打席まで3塁打とヒットと2本のタイムリーでこの試合は絶好調。この打席も牛島を捉え、本塁打。北野は8回に2塁打を放ちセンバツ史上初のサイクルヒットをなんと決勝戦で達成しました。北野はこの試合まで12打数2安打と不振。当日に尾藤監督からアドバイスを受け、゛今日は打てる゛と予感を抱いたそうです。打たれた牛島投手は2回戦から4日連投の40イニングを投げており、限界を超えていました。毎回のように箕島のバント戦法にかき回され、スクイズを決められた時などは一塁線に倒れてしばらく立ち上がれませんでした。ナインに抱き上げられるようにして、やっとマウンドに上がっていました。北野がサイクルヒットを決めた打席、浪商の広瀬監督は伝令を通じて「敬遠」の指示をだしますがそこは浪商のエース牛島、伝令に「投げてるのは俺や 黙ってみとけ!と言い放ち、勝負します。私は牛島投手のこの負けん気の強さが好きです。

 試合に戻りますが、箕島はお家芸の機動力も冴え、7回の北野の同点ホームランの後の決勝点は上野の三塁打の後に森川(夏の大会ではあの伝説の試合、星稜との延長18回の試合で16回裏に二死無走者から同点ホームランを打った選手です)が決めた絶妙のバントでした。箕島は8回に北野の2塁打でダメ押しし、浪商の9回の反撃を1点でかわし、紫紺の優勝旗を手にしました。

 好投手の対決も疲れからか打撃上位となった試合でした。二転三転となった試合の結果はチャンスを確実に生かした箕島の攻撃と北野のサイクルヒットと4打点が効き、箕島が2年振り3回目の優勝を果たしました。両監督も「100パーセントの力を出したいい試合だった」と評しました。大会全体としましても接戦、延長が多く、どのチームが勝ち上がるか楽しい大会でした。

 おまけとしましてこの51回大会の好選手をピックアップしますと、天理に投げ勝った鶴商学園:君島。倉吉北:矢田投手。初戦で敗れたものの府中東:片岡投手。尼崎北の田中と安永のバッテリー。川之江の躍進の原動力となった鍋島投手。前橋工の3本の矢:小川、蓮場、馬場の3投手。大分商の岡崎(センバツでは投手、夏は遊撃手でベスト8)などがあげられます。PLの阿部や山中、小早川。池田の橋川投手、東洋大姫路の打撃力も印象に残りました。また、豆知識としてチョットだけ。当時の池田は3年後の「やまびこ打線」の前で機動力の野球が持ち味でした。一試合の平均盗塁数が4.8個で出場校の中でトップの数字。準々決勝の東洋大姫路との雨中の決戦は未だに話題になるほどの記憶に残る試合です。 

決勝

4月7日

チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
浪商 1 0 0 0 0 3 2 0 1 7 13 3
箕島 1 0 2 1 0 1 2 1 X 8 13 2
  1. (浪) : 牛島 - 香川
  2. (箕) : 石井 - 嶋田宗
  3. 審判球審郷司、塁審…山川・鈴木・永野
  4. 試合時間:2時間25分

 本日は以上です。

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