大阪桐蔭神宮大会連覇を果たし、来春センバツの「神宮枠」を持ち帰った。これで近畿からは7校が一般枠で出場することになる。この恩恵にあずかるのはどのチームか?そして94回のセンバツの歴史で、近畿にだけ存在する出場校あるあるとは?

4強プラス彦根総合は安泰か?

 近畿の選考では、近畿大会の4強が選ばれることは当然としても、残る2校を巡って毎年のように揉めてきた歴史がある。来春の顔ぶれを予想すると、近畿大会の上位である大阪桐蔭報徳学園(兵庫)、智弁和歌山龍谷大平安(京都)の選出に異議を差しはさむ余地はない。残る2校については準々決勝敗退の4校から選ばれるのが通例である。試合内容や地域性を考慮すると、大阪桐蔭に中盤まで善戦した彦根総合(滋賀)がまず抜け出すだろう。残る1校については、よく選考会後に言われる「多角的」な分析が必要になる。

戦力的には履正社だが…

 戦力だけでみれば、履正社(大阪)は外せない。大阪大会では大阪桐蔭に0-7で完敗したが、多彩な投手陣と分厚い攻撃力で、4強勢に引けをとらない。準々決勝で敗退した高田商(奈良)、(兵庫)よりも力はあるだろう。こと戦力に限って言えば、4番目までに入ってきてもおかしくない。しかし、今年までの94回を振り返ると、近畿のセンバツ出場校に、ある奇妙な法則があることに気がつく。

94回連続で近畿から公立校出場

 それは「近畿から必ず公立校が選ばれている」という事実だ。読者もご自身で確認すれば、驚かれることだろう。一般枠で私立しか選ばれなかった82回大会では向陽、86回大会では海南、87回大会では桐蔭と、和歌山の名門校が21世紀枠で選ばれた。このころから、一部の熱心なファンや高校野球関係者の間でささやかれ始め、筆者も関心を持った。理由はもちろん不明だが、事実は事実。ここまで長く続くと、単なる偶然で済ませることができるだろうか。

7枠目に公立が浮上か?

 近畿大会の振り返り記事で、「公立の高田商と社は厳しい」と書いた。これは近畿大会を取材した率直な感想で、スコアからも判断がつくとは思うが、いずれかを浮上させるにはかなり無理がある。6校のままなら公立ゼロが濃厚と言わざるを得ず、謎の法則通りに公立を選ぶなら、履正社彦根総合を落とさなければならない。しかしこれで、7枠目に公立が食い込むことは確実。その意味でも、大阪桐蔭のもたらした神宮枠は貴重だと言える。

1年生左腕好投も打線低調の高田商

 候補に挙がる両校は甲乙つけがたい。高田商は初戦で乙訓(京都1位)との公立対決を、1-0のサヨナラで制した(タイトル写真)。

 

高田商の仲井は、打者のタイミングを外し凡打の山を築く。低めへの制球力が生命線だ(筆者撮影)
高田商の仲井は、打者のタイミングを外し凡打の山を築く。低めへの制球力が生命線だ(筆者撮影)

 

 1年生エースの仲井颯太は、球威こそないが、低めにボールを集め、緩急でタイミングを外す技巧派。右打者の外角に大きく変化する球を有効に使い、京都大会で好調だった乙訓打線を2安打に封じた。打線は大会を通して低調で、準々決勝では龍谷大平安に完封され、近畿大2試合でわずか1得点がどう評価されるか。あとは、公表されたセンバツガイドラインに従えば、「実力同等評価の場合は地域性優先」とあり、奈良から唯一の8強も追い風になる。

社は完封コールド負けが痛恨

 今夏の甲子園に出場した社は、天理(奈良)の投手陣を打ち崩し、14安打13得点で打ち勝った。連日の試合となった智弁和歌山戦は一転、打線が沈黙し0-7のコールド負けは痛恨だった。エース・高橋大和(2年)は140キロを超える速球を軸に、チェンジアップやカーブで緩急をつける。近畿大会では制球に苦しむ場面もあり、2試合で4本塁打を浴びた。控え投手のレベルアップに期待したい。

 

社は左打者中心の打線で下位まで力強い。8番を打つ河関(こうぜき)楓太(2年)は近畿大会2試合で7打数5安打と打ちまくった(筆者撮影)
社は左打者中心の打線で下位まで力強い。8番を打つ河関(こうぜき)楓太(2年)は近畿大会2試合で7打数5安打と打ちまくった(筆者撮影)

 

 打線は中軸を左打者で固め、下位打者までしぶとくつなぐ。同じコールド負けでも、高橋が打たれたことには連戦を考慮してもらえる可能性を残すが、打線が完封されたのは返す返すも痛かった

高田商に神宮枠なら歴史は繰り返される

 実は6年前の和歌山開催でも、高田商は当落線上だった。準々決勝で履正社にコールド負けしたが、結果的にその履正社が持ち帰った神宮枠によって救われた。この時の近畿勢も、6校目まで公立がなく、高田商の神宮枠での選出によって、近畿勢の1回大会からの公立連続出場は途切れずに済んだ。果たして歴史は繰り返されることになるのだろうか。選考会は来年1月27日に開かれる。