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高校野球あれこれ 第89号

選手が北陸を選んだわけ 

常勝・敦賀気比、倒すため /福井

 

敦賀気比を倒すためです」。北陸野球部には、北陸進学を選んだ理由についてこう説明する選手が何人かいる。なぜ敦賀気比を倒したいのか。その疑問の答えには、敦賀気比のコーチを経て2019年から指導する林孝臣監督(40)が「革命を起こそう」と作り上げたチームの特色が関係している。

 

 ◇県内出身中心に

 

 敦賀気比は、全国的に野球の強豪校と知られ、県外出身の選手も多いが、北陸の選手は大半が県内からだ。敦賀気比のコーチ時代、県内選手のスカウトを担当していた林監督は、多くの福井の優秀な選手を見てきた。「福井の子供は小中学校の体力テストで全国上位になるほど能力が高い。県内出身者を中心に、北陸が頂点に立つという革命を起こす気持ちでチーム作りに取り組んだ」と話す。

 

 そうした姿勢は地元の優秀な選手たちを引き寄せた。例えば、敦賀気比のある福井県敦賀市出身の笹井多輝(たき)主将(2年)。「北陸に進み、福井の選手で常勝軍団の敦賀気比を倒したいと思った」と明かす。また、1年ながら昨秋の大会で活躍した小矢宙歌(そらた)外野手も同市出身。甲子園球場まで敦賀気比の応援に行くなど、同校は身近な存在だったが、笹井主将と同様の理由で北陸に進学。攻守の要としてチームを引っ張る鯖江市出身の平田海智捕手(2年)も「福井の高校野球といえば敦賀気比というイメージ。それが続くのは面白くないと思った」と話す。

 

 ◇徹底して体作り

 

 しかし、新型コロナ禍の中止以降、春夏合わせて5季連続で甲子園出場を続けている敦賀気比を倒すのは、容易ではない。だからこそ、林監督をはじめとする指導陣の課す練習は厳しい。笹井主将は「入部後の数カ月はボールにほとんど触らず、長距離走ダッシュだけで2~3時間。さらに素振りも1000回あり、耐えられるかなと思うほどきつかった」と振り返る。この徹底した体作りは、その後選手たちの能力を伸ばす土台になった。

 

 エースで4番を務める友広陸投手(2年)は、林監督に「日本一の投手にしてやる」と誘われ、越前町立織田中から北陸に進学した。入学当初は体が細く、フォームが不安定で制球力に欠けていたが、走り込みや筋力トレーニングで下半身が安定。球速も最速125キロから139キロまで伸びた。「敦賀気比のような強いチームでは、自分が活躍しなくても勝つので満足してしまい、力が伸びなかったかもしれない。周りと一緒に成長しながら甲子園を目指すのが自分には合っていた」と説明する。

 

 ◇全員で切磋琢磨

 

 北陸では、選手43人をベンチ入りの可能性がある「A」とそれ以外の「B」の2チームに分けているが、練習内容はほぼ同じだ。林監督は「全員野球でやっていきたい。全員がまんべんなく力を付け、その中で切磋琢磨(せっさたくま)してほしい」と願う。

 

 ◇いざセンバツ

 

 昨秋の敦賀気比との北信越大会決勝。投手3人の継投などまさに全員野球で接戦に持ち込み、延長十三回に小矢外野手の適時内野安打で勝ち越し、2-1で勝利した。林監督の就任後は初めてとなる敦賀気比からの白星を挙げた北陸ナインは、さらなる高みを目指して甲子園の舞台に備えている。