「大阪2強」が滋賀勢に連敗の衝撃!波乱の近畿大会は4強が決まり、センバツに大阪ゼロの危機?
開幕戦で履正社(大阪1位)が、近畿大会初出場の滋賀短大付(滋賀2位)に1-4で敗れたのに続き、近畿大会3連覇中の大阪桐蔭(大阪2位)も、今夏甲子園8強の滋賀学園(滋賀1位)に2-3で逆転負け。6年連続のセンバツ出場が絶望的になった。「大阪2強」と称される両校が、揃って近畿大会の初戦で敗れるのは初めて。しかも相手がいずれも近畿で唯一、甲子園優勝経験のない滋賀代表とあって、これはもう衝撃としか言いようがない。
メンバー一新の滋賀学園に対し、大阪桐蔭はダブルエース健在
滋賀学園は夏の甲子園後、野手メンバーは一新。投手も、甲子園で好投した土田悠貴(2年)が不調に陥り、新エースの長崎蓮汰(2年)はベンチ入りしていただけ。大阪桐蔭はいずれも2年生の森陽樹、中野大虎(だいと=主将)のダブルエースだけでなく、1番を打つ宮本楽久(がく)、3番の畠中健太、捕手の増田湧太ら、甲子園経験者も多く、経験値は比較にならない。大阪2位と言っても、実力は全国でもトップクラス。まさに高校球界の頂点に君臨するチームだ。
まさかの押し出しから逆転され、終盤に打線が援護できず
試合は大阪桐蔭の森が3回まで、1安打4奪三振と絶好の立ち上がり。4回に滋賀学園5番・吉森爽心(1年)に2死から適時打を浴びるも、3番・畠中の同点打、5番・増田のスクイズ(記録は適時内野安打)ですかさず逆転した。しかし6回、先頭の振り逃げ(記録は捕逸)から得点圏に走者を背負うと、大阪桐蔭の西谷浩一監督(55)は、「タイミングが合っている」という吉森に申告敬遠を指示。これが裏目に出て、森は連続四球を与え押し出しで同点。さらに8番・藤本聖人(2年=主将)の適時打で2-3と、逆転を許した。その後は中野が1安打無失点と好投したが、打線が滋賀学園の長崎を攻めきれず、わずか1点を追いつくことができなかった。
西谷監督は、「勝たないといけない試合。負けたので、夏に向けてやるしかない。森は大阪大会よりも調子が上がっていたので先発させた。(押し出しの)四球を出すとは思っていなかった」と、淡々と振り返った。滋賀学園との力関係で言えば、ダブルエースで3失点(自責1)は問題なく、夏の小松大谷(石川)戦の完封負けが尾を引いているのか、打線の迫力不足、決定力不足が気になる。新バットへの対応が、夏までの課題だろう。
智弁和歌山は鮮やかに完封リレーを完成
最後の登場となった智弁和歌山(和歌山1位)は、神戸学院大付(兵庫2位)を攻守に圧倒した。初回に5番・山田凛虎(りとら=1年)の適時二塁打で先制すると、4回にはスクイズと相手の失策でリードを広げる。投げてはエース・渡辺颯人(はやと=1年)が、足に打球直撃されながらも6回を6安打無失点。7回からは最速152キロの剛腕・宮口龍斗(2年)が危なげなく締め、完封リレーを完成させた。中盤にも中軸に適時打が出て5-0の完勝に、智弁和歌山の中谷仁監督(45)は、「バッテリー中心に、守り勝てればいいと思っていた。バントやスクイズの練習も多めにやっている」と、会心の勝利に満足そうだった。
一方、5失策と看板の守りが崩れた神戸学院の岩上昌由監督(48)は、「ミスも含めて、もっと野球を上手にならないと。これから戦う集団にしていく」と、再起を誓った。
滋賀短は天理に4回以降、無安打に抑えられる
これで8強が出揃い、滋賀と和歌山が2校、その他が1校ずつで、勝てばセンバツ当確となる準々決勝へと進む。近畿はこの準々が最大の選考ポイントになるが、まずは、初戦で履正社を破って勢いに乗る滋賀短が、近畿大会最多の優勝9回を誇る天理(奈良1位)に挑んだ。2回に先制された滋賀短は3回表、5番・峯悠汰(1年)が、天理のエース・下坊大陸(2年)から同点打を放ち、すかさず追いつく。
しかし、頼みの左腕・櫻本拓夢(2年)が制球に苦しんで四球や失策から失点し、主導権を渡した。4回以降は天理の二番手・伊藤達也(2年)から5つの四死球を得ただけで無安打に抑えられ、1-4で敗れた。滋賀短の保木(ほうき)淳監督(39)は、「序盤のチャンスでもう1本出ていれば。でも履正社、天理という全国トップクラスのチームとやれて、技術的、精神的に成長できた」と、収穫を強調していた。立ち上がりは優勢だっただけに、3回までの5残塁はもったいなかったが、初出場で大健闘と言っていいだろう。
大院大高は、東洋大姫路のエースに力負け
大阪の最後の砦となった大阪学院大高(大阪3位)は、優勝候補の東洋大姫路(兵庫1位)に投打で力負けした。先発の下條晃大(2年)は2回に3安打を浴びて失点したが、その後よく耐え、味方の反撃を待つ。5回にようやく相手エースの阪下漣(2年)から、先頭の4番・樋爪(といづめ)信(1年)が二塁打で出て初めての得点機を迎えたが、続く三者が倒れ、追いつけなかった。直後の6回に、東洋大姫路はスクイズと1、2番の連続適時打で突き放し、4-0で快勝。阪下は2試合連続の完封となった。
敗れた大院大高の辻盛英一監督(48)は、「5回まではプラン通りだったが、6回の3点が痛かった。体力、パワー、マインドも全て、全国で通用する力をつけたい」と話したが、阪下の球威に押される場面が目立っていた。5回に追いついていれば、展開も違っただろう。また二番手で投げた背番号1の山本凌青(2年)が、3回をパーフェクトに抑える好投は見事だった。
市和歌山は打線爆発で、立宇治にコールド勝ち
続く試合は予想外の展開となった。初戦で1得点に終わった市和歌山(和歌山3位)の打線が大爆発。初回に5安打で2点を奪うと、その後も攻撃の手を緩めず、立命館宇治(京都1位)のエース・道勇壱心(2年)から4回までで9安打4得点。代わった最速146キロの右腕・柴田淳之介(2年)からも4点を奪うなど猛攻は止むことなく、一方的な試合となった。仕上げに6番・川辺謙信(2年=主将)が、大会第1号を放って、市和歌山が6回コールドの10-0で圧勝した。市和歌山はエース・土井源二郎(2年)が5回まで無安打投球で、6回を2安打無失点。2試合連続の完封勝利となった。本塁打を放った川辺は、新チームスタート時は4番を打っていて、半田真一監督(44)が、「背負うタイプなので、主将、捕手で4番だと負担が大きい」と、気楽に打てる6番に下げたのが奏功。この日は4打数4安打3打点の大活躍だった。
まさかの完敗となった立宇治の里井祥吾監督(41)は、「相手の打力が凄まじかった。踏み込んで逆方向への長打など、新バットになって一番、打ち込まれた試合だった」と、17安打10得点の相手打線に脱帽していた。
滋賀学園は甲子園で好投の土田が復調ならず
準々決勝最後の試合は、前日との連戦になる。滋賀学園は初回、智弁和歌山のエース・渡辺を攻めて2点を先制する。この日は土田が先発したが、先頭に四球を与え、あっさり失点すると、3回までに4点を失って、山口達也監督(53)の期待に応えられなかった。一方の渡辺は尻上がりにテンポもよくなり、2回以降は散発の4安打でゼロを並べた。最終スコアは7-2だったが、滋賀学園には明らかに前日の疲れが残っているように見えた。
山口監督は「条件は同じ」と、言い訳にしなかったが、大阪桐蔭に勝った翌日に智弁和歌山と当たるのは、心身ともにかなり厳しい。打たれた土田は、捕手の太田陽人(2年)に抱きかかえられながら引き上げたあとも、「ほんまにごめん」と号泣していた。本人が「新チームが始まってから思うような投球ができず、『こんなはずじゃない』と思いながら投げている」と話すように、山口監督も甲子園の残像と戦う土田の姿を目の当たりにしてきた。山口監督は、「この敗戦を糧にしてほしい」と、元エースの復活を願っている。
4強プラス、滋賀1校は確実だが…
これで4強が決まり、天理、東洋大姫路、市和歌山、智弁和歌山のセンバツ出場は確実になった。残る2校は、8強敗退組から選ばれるのが通例で、ともに8強で敗退した滋賀勢のうち、1校はまず選ばれるだろう。また、痛恨のコールド負けを喫した立宇治はかなり厳しい状況で、大阪で唯一、残った大院大高は「地域性」で浮上するか。ただ、近畿大会2試合トータルの内容では、「大阪2強」を倒した滋賀勢には及ばない。近畿大会の終了後に、さらに深めて検証したい。