ぼくらのサイトⅢ

スポーツ、特に高校野球の記事を中心にして、監督、伝説の試合、結果考察などを記しています。 記事に関連した書籍やコーヒー機能付きウォーターサーバー、  生ビールサーバーを紹介しています。

高校野球あれこれ 第261号

大阪桐蔭が、春夏通算10度目の甲子園大会制覇!低い前評判、苦戦の連続を覆した2つの要因とは?

 第98回のセンバツは小雨の降る中、智弁学園(奈良)と大阪桐蔭(タイトル写真)の決勝となり、大阪桐蔭が7-3で快勝して、4年ぶり5回目の優勝。春夏通算でも10回目の甲子園大会優勝という偉業を達成した。

苦戦の連続も、名将の采配が冴える

 今大会の大阪桐蔭は、前評判がそれほど高いわけでもなく、実際に2回戦から準決勝までの3試合は、負けていてもおかしくない試合内容だった。それでも勝ち切るあたりは、高校球界の盟主として、常に全国から目標にされ、跳ね返してきた伝統の賜物だろう。西谷浩一監督(56)が、「今年は甲子園を経験している選手がいない」と話す一方で、投手の起用や攻撃面での早めの仕掛けなど、甲子園の戦い方を知り尽くしている采配の妙が、頂点まで導いたと言える。

選手の力量不足を覆したものは?

 実際。今チームの選手の顔ぶれを見ても、例年の陣容と比較すれば決して優れているとは言えない。少なくとも秋の段階では、春夏の甲子園を逃した前チームより、やや落ちるように映った。その差は、投手陣の経験値や、粒揃いだった野手陣の力量を比較すれば、歴然としている。それを覆したものは何か?それは、傑出した下級生の逸材と、今大会から導入された「DH=指名打者制」をうまく生かしたことによる。

初戦の先発に起用された川本が、鮮烈デビュー

 今チームは、エース・吉岡貫介(3年)の調整がやや遅れたこともあってか、熊本工との初戦には、192センチの大型左腕・川本晴大(2年)が抜てきされた。

 川本は秋も主戦格だったが、控えに吉岡ら先輩投手陣が控えていることもあり、比較的のびのびと投げていた印象がある。また、西谷監督は甲子園大会の初戦には、そのチームのエースを起用することが多く、当然、上級生の吉岡が指名されるものと思っていた。川本は、熊本工から14三振を奪い、3安打完封。自己最速を2キロ更新する148キロを出すなど、鮮烈な甲子園デビューを果たした。ちなみに川本は、その後の試合で149キロまで自己最速を伸ばしていて、非公式ながら、151キロを計測したスピードガンもあったようだ。そして試合後の西谷監督からは、「あれくらいは投げてくれると思っていた」という言葉が飛び出した。

川本は決勝で15奪三振の完投勝利

 川本は、英明(香川)との準々決勝、専大松戸(千葉)との準決勝でも救援登板。いずれも失点したものの、要所を三振で切り抜ける頼もしさで、僅差の試合をモノにする。決勝は、智弁・杉本真滉(3年)との新旧トップ左腕対決となった。この試合は、3点差を智弁がじわじわと追い上げ、本塁打で追いつかれる厳しい展開となったが、追いつかれた直後に味方が4点を勝ち越すと、ギアが上がり、150球の熱投で15奪三振の完投。川本はこのセンバツで4勝を挙げ、24回を投げて36奪三振という驚くべき数字をマークした。4年前の優勝時も、当時2年生だった前田悠伍(ソフトバンク)が実質はエースで、その前田に憧れていたという川本は、先輩をはるかに上回る内容とインパクトで、全国優勝の立役者となった。

低調な打線を支えた背番号20の4番打者

 そして全体的に低調だった打線を支えたのが、DHで4番を打った谷渕瑛仁(3年)だ。4番打者の背番号「20」に違和感のあったファンもいるかと思うが、谷渕は秋も4番を打っていて、近畿地区屈指の右腕・丹羽涼介(3年)が投げる市和歌山との近畿大会初戦でサイクル安打も達成している。

 秋は背番号3で三塁を守っていたが、冬の期間中の腰痛で練習が足りておらず、本番に間に合うかどうかの状態だったようである。西谷監督は、「ほかの選手も伸びてきているし、『もっと頑張れよ』の激励の意味もある」と、20番について説明したが、れっきとした4番打者であることは、初戦から証明された。

DHに最強打者を起用して得点力補う

 谷渕は、熊本工戦の初回に先制の適時打を放つと、8回には貴重な追加点となる犠飛を放って2打点。三重との2回戦も適時二塁打、英明戦が極め付きで、同点適時二塁打に、勝ち越しの本塁打。さらに追いつかれたあとは、決勝点を演出するバスターエンドラン(二塁打)を鮮やかに決めた。5試合で打率.316の1本塁打、5打点と中軸としての役割を果たした谷渕は、「守備があまり得意ではないので、その部分はすこし安心して打撃に専念できる」と謙遜するが、内外野に捕手もできるようで、決して「打つだけの選手」ではない。今回から採用されたDHの使い方に苦慮するチームが多い中、大阪桐蔭はDHに最強打者を充て、得点力不足を補った。

過去4度のセンバツ優勝時は夏の甲子園にも出場

 大阪桐蔭の優勝にケチをつけるつもりは毛頭ないが、準決勝までの智弁の対戦相手とを比較すれば、力勝負で大阪桐蔭と渡り合えるチームはなかった。1回戦の登場が最も遅く、日程運は最悪だったが、この枠に入って3度目の優勝でもあり、短期間の戦い方を熟知している西谷監督やスタッフのサポートは見逃せない。そしていみじくも西谷監督が言った、「過去2回の春夏連覇に比べれば、力がないのは明確」に象徴されるように、選手の力量で大阪桐蔭を上回るチームは、全国に何校もある。そして大阪桐蔭の過去4度のセンバツ制覇時に、夏の甲子園を逃したことはない。3度目の春夏連覇へ、戦いはもう始まっている。