ぼくらのサイトⅢ

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高校野球あれこれ 第198号

今年は改革元年?「新バット導入」で激変した24年の高校野球総括!勝敗を分けた特徴的傾向を徹底分析する

 今年の高校野球は、センバツから導入となった「新基準低反発バット」(新バット)によって、戦い方が大きく変わった。まさに「改革元年」と言っていい。よほど芯でとらえない限り、外野を超えていく打球はまれで、飛距離は格段に落ちた。当然、投手が優位になる。実際、春夏とも、甲子園の覇者は投手力に秀でたチームだった。

センバツは「ダブルエース」のチームが決勝へ

 センバツ前の取材から、バントの重要性や、難しくなる外野手の守備などを指摘する指導者は多かった。ただ実戦経験が乏しかったため、最初の使用機会となるセンバツに、全国の関係者の視線が注がれた。予想通り本塁打は前年の12本から激減し、わずか3本。うち1本がランニング本塁打だったため、「さく越え」は2本にとどまった。当然のことながら、投手力のいいチームが上位に残り、優勝した健大高崎(群馬)には、左腕の佐藤龍月、剛速球右腕の石垣元気(ともに2年)の左右の両輪。準優勝の報徳学園(兵庫)には、前年から主戦級だった間木歩(3年=主将)と今朝丸裕喜(3年)の本格派右腕二枚を擁していた。上位進出のためには、信頼できる複数の好投手が必要なのは、今に始まったことではないが、打力のあるチームが豪快にひっくり返すような、スリリングな試合展開が減ったことも挙げられる。

夏の決勝は0-0のまま延長タイブレーク

 その傾向がより鮮明になったのが夏の甲子園だ。大会通算本塁打は、昨年の23本から7本と激減傾向は変わらず、投手の活躍が目立った。優勝した京都国際(タイトル写真)は、1回戦から準々決勝まで、エースの中崎琉生(3年)と西村一(2年)の両左腕が交互に完投し、準決勝と決勝は継投策で乗り切った。特に西村は24回を投げて自責ゼロ。6試合のチーム防御率も0.82という驚異的なものだった。ちなみに準優勝の関東一(東東京)もチーム防御率は0点台で、夏の甲子園としては異例の投手優位。消耗が激しいはずの決勝が0-0のままタイブレークに突入したのがその象徴で、昨年までのバットを使っていたらあり得なかっただろう。

公立のスーパーエースが強豪連破も

 また、ひと昔前の一人エースで勝ち進むという「回帰現象」もあった。大社(島根)の快進撃がそれで、初戦で報徳を破ると、創成館(長崎)と早稲田実西東京)に延長タイブレークで連勝して、93年ぶりの8強入りを果たした。エース左腕の馬庭優太(3年)は3試合連続完投だったが、早実戦から中1日となった神村学園(鹿児島)との準々決勝では先発を回避。5回途中から登板したが、さすがに疲労は隠せず、5失点(自責4)と苦しんだ。それでも公立校が強豪私学を連破するさまは、久しく甲子園ではお目にかかれなかった。これも新バットがもたらした効能と言えなくはない。

バントの成否が勝敗を分けた

 一方、攻撃面で新バットはどんな影響をもたらしたのだろう。最も目についたのが、バントの成否で明暗が分かれたことだ。前述の大社と早実の延長戦では、大社の絶妙なバント安打がサヨナラ勝ちにつながった。8強入りした滋賀学園は、1死からでもバントで得点圏走者にこだわり、適時打で加点する手堅い攻めを見せた。滋賀学園は、8強進出校で、犠打の数とチーム打率はいずれもトップ。敗れた青森山田との準々決勝では、初回の無死2塁からバントを失敗して、押し気味だった試合を0-1で落とした。その意味では、守備側の簡単にバントをさせない投手の球威やバントシフトも重要になってくる。

全国の指導者が参考にした霞ケ浦の左腕

 そして最も新バット野球の方向性の指標となったのが、2回戦の霞ケ浦(茨城)と智弁和歌山の試合だった。霞ケ浦の左腕・市村才樹(2年)は、100キロに満たない「超遅球」を駆使して強打線を抑え込んだ。最終的には8回に本塁打2本で追いつかれたが、7回まで3安打無失点に抑えた投球は、全国の指導者に衝撃を与え、秋の大会でも複数の監督が、「この試合が参考になった」と話していた。つまり、球威がなくとも、バットの芯を外すコースに投げ切れれば、凡打を量産させられるということだ。以前なら、少々バットの先でも大きな当たりが出た。しかし、新バットは、いわゆるスイートスポット、つまり芯に相当する部分が小さく、外れると詰まったり、当たり損ねの打球になったりする。

高校生の技術向上につながる新バット

 新チームとなった秋の大会でもその傾向は変わらず、投手力のチームが上位に顔を揃えた。ただし、以前のような球威のある本格派エースのチームばかりではなく、制球力に優れた投手を堅守で支えるチームが、接戦をモノにした印象がある。来春のセンバツは新バット導入後1年となり、選手たちも慣れてくるだろう。今春のセンバツに出場した京都外大西上羽功晃監督(54)は、「高校生の技術は上がってくるはずで、将来につながる」と、木製バットに近い仕様の新バット導入に前向きな見方をしていた。以前、進学したりプロに進んだりして、木製バットと金属バットの違いに戸惑う選手が多かったことを考えれば、受け入れる側も大歓迎だろう。チームにとっても、選手にとっても、改革のスタートとなった24年シーズンだった。

 

高校野球あれこれ 第197号

横浜「神宮V」で関東・東京が1枠増!

混迷極める“大阪枠”の行方は

 

大阪から出場校がなかったのは過去1回のみ…来春の選抜ではどうなる

 横浜(関東・神奈川)が松坂大輔を擁した1997年以来、27年ぶり2度目の明治神宮大会優勝を果たした。

 25日に行われた高校の部・決勝戦は、横浜と広島商(中国・広島)による伝統校対決。試合を優位に進めたのは後攻の横浜だった。初回に2点を挙げると、2回にも2点を追加し、ペースを掌握した。

 ところが広島商は、3回途中から2番手でマウンドに上がった片岡虎士が粘投。横浜打線を封じ込め、流れを引き寄せると、広島商打線は7回に2点、最終回にも1点を奪い、1点差に詰め寄った。しかし、最後は横浜の2番手・奥村頼人の前にあと1点が取れず。初出場の広島商は準優勝に終わった。

 この結果、来春の選抜で6枠が割り当てられている「関東・東京」が1枠増の7枠に。関東6・東京1、もしくは関東5・東京2のどちらかになるが、秋季地区大会の戦いぶりから、関東は4強(横浜、健大高崎、浦和実、千葉黎明)に加えて、準々決勝で横浜に0-2で惜敗した東農大二の5校が有力。残り2校は、東京大会の決勝でタイブレークの死闘を演じた二松学舎大付早実となりそうだ。

 もし6枠のままなら東農大二早実の争いになるとみられていたが、横浜の後押しを受けて関東・東京はほぼ無風となる可能性が高まった。

 一方で、優勝校の一角として出場した近畿地区の覇者・東洋大姫路が準決勝で横浜に敗退。6枠のままとなった近畿地区は、難しい選考を強いられそうだ。

 まず、関東と同じく近畿も4強(東洋大姫路智弁和歌山、天理、市和歌山)は“当確”。これに加えて準々決勝で敗れた4校から2校が選出されるとみられるが、市和歌山に0-10でコールド負けを喫した立命館宇治が脱落する。

 残り3校で2枠を争うが、1回戦で大阪桐蔭を撃破した県1位・滋賀学園の5枠目が濃厚。そして、県2位の滋賀短大付と大阪3位の大阪学院大高が最後のイスを巡って比較対象となる公算が高い。

 滋賀短大付は近畿大会1回戦で履正社に競り勝ったが、準々決勝で天理に1-4で完敗を喫した。一方の大阪学院大高は1回戦で京都の北稜に1-0で辛勝するも、東洋大姫路に0-4と完封負け。2試合合計で1得点とイメージは良くない。ただ大阪学院大高を破った東洋大姫路が強い内容で優勝しており、その点も加味されればチャンスが増すだろう。

 さらに、大阪学院大高の追い風となるのが“大阪枠”の存在。過去96回を数える選抜大会で、強豪校ぞろいの大阪から出場校がなかったのは、1927年の第4回大会のみ。ちなみに同大会は出場校8校の少数精鋭だった。

 また、2003年の選抜には近大付が選ばれたが、実は前年秋の近畿大会で大阪勢3校はそろって初戦敗退。それでも「忠実にセンター返しを実行している」という理由で、ベスト8校を押し退けて選出された。

 ほぼ毎年出場を続けてきた“大阪枠”が存在するとすれば、大阪学院大校が優位にも見えるが、無視できないのが大阪の21世紀枠に推薦された府立市岡である。1901年創立の古豪は、第1回夏の地方大会から皆勤を続けており、話題性も十分。これまで大阪から21世紀枠で出場した高校は皆無で、府立高校を“選抜”するまたとない機会でもある。市岡が“大阪枠”に食い込んでくる可能性は十分あるだろう。

 ただ、市岡は来月13日に発表される近畿地区の推薦校に残る必要がある。

 来春の選抜は、市岡と大阪学院大高のそろい踏み、どちらか1校、可能性は低いがどちらも選ばれない。この3択とみられるが、どんな結末を迎えるだろうか。

 

高校野球あれこれ 第196号

「野球王国」大阪、来春選抜不出場の可能性も 98年ぶりの危機

 

  来春の第97回選抜高校野球大会は、大阪勢が不在となるかもしれない。都道府県別で最多の優勝回数と勝利数を誇るが、出場校を選ぶ重要な判断材料になる今秋の近畿大会で出場3校がすべて早々に敗れたためだ。不在となれば98年ぶりの珍事となる。

  今秋の近畿大会は、4日の決勝で東洋大姫路(兵庫)が5―1で智弁和歌山を破って優勝した。そのほかの4強は天理(奈良)と市和歌山で、大阪勢の姿はなかった。履正社(大阪1位)、大阪桐蔭(同2位)が1回戦で姿を消し、大阪学院大(同3位)は準々決勝で敗れた。

 大阪学院大の辻盛英一監督は「無理でしょう。選抜はもう考えていません。もっと(選手に)パワーをつけたい」と話した。履正社の多田晃監督は「全てが後手後手に回った。完敗」と悔しさをあらわにした。大阪桐蔭西谷浩一監督は「負けたので、もう夏に向かってやるしかない」と選抜後を見据えていた。

 32校が出場する来春の選抜は、一般選考29校のうち近畿地区から6校が選ばれる。例年の選考に基づくと、秋の近畿大会で準決勝に進めば出場は有力となり、残る2校は準々決勝までの試合内容や地域性などが比較検討され、決まる。

 準々決勝で敗れたのは大阪学院大、立命館宇治(京都)、滋賀学園、滋賀短大付の4校。大阪学院大は東洋大姫路に0―4で敗れ、立命館宇治は市和歌山に0―10で6回コールド負け。一方で、滋賀の2校は1回戦で大阪桐蔭履正社を倒しており、選考では追い風になるとみられる。

 大阪勢はこれまで選抜で優勝12回、通算215勝を挙げており、いずれも全国最多だ。2017年の第89回大会は、大阪桐蔭履正社が決勝で対戦。大阪桐蔭が勝ち、2度目の優勝を飾った。過去の選抜で大阪勢が出場を逃したのは1927(昭和2)年の第4回大会のみ。来春の出場が叶(かな)わなければ、大阪勢にとって98年ぶり2度目の屈辱になる。

残るチャンスは…

 一体どうしたのか。

 共通したのは得点力不足だった。履正社は滋賀短大付との1回戦で左投手の緩急に苦しんだ。大阪桐蔭は、昨年まで秋の近畿大会は5年連続決勝進出、3年連続で優勝していたが、滋賀学園との1回戦で攻めあぐね、逆転負けした。大阪学院大は2試合で1得点だった。3校とも外野手の頭を越えたり、外野手の間を抜けたりする打球がほぼなかった。

 大阪府高校野球連盟の入道美之理事長は「履正社は大阪1位という油断がどこかにあったのではないか。大阪桐蔭は低反発バットになって、かつてのようには勝てなくなった。大阪には厳しい近畿大会になった」という。

 対照的に、今秋の近畿大会を制した東洋大姫路は決勝までの4試合で計40安打、29得点。力強い打球が野手の間を抜け、畳みかける迫力が打線にあった。岡田龍生監督は今年から導入された低反発バットへの対応について「これまでは金属バットの性能に頼っても飛んでくれたが、今はしっかりボールをとらえる打撃技術を身につけることが重要になっている」と語った。

 準優勝の智弁和歌山は、伝統の強打に頼らなかった。神戸学院大付(兵庫)との1回戦は送りバントを六つ決め、バント安打や盗塁を絡めて5点を奪った。中谷仁監督は「(新チームになったばかりで)秋(の大会)はなかなか打てない。先にリードする展開に持ち込むことがより大事。バントなど細かいプレーの意識はチームに徹底させている」。

 困難の克服など、大会成績以外の要素も評価される21世紀枠で2校が選ばれる。府内からは今秋の府大会16強の市岡が候補校になった。

 選抜の出場32校は来年1月24日の選考委員会で決まる。

 

 

高校野球あれこれ 第195号

甲子園優勝経験が6校も!高校野球シーズンを締めくくる神宮大会には、超豪華メンバーが集結する

 
シーズン最後の大一番!神宮大会は10校によって優勝が争われる

 20日に開幕する明治神宮大会には、全国10地区の秋季大会優勝校が集結する。地区大会では波乱も多く、来春のセンバツには関東や九州から「甲子園デビュー」の学校もありそうだ。ただ、やはり地区の王者となると話は別で、名門や強豪が出揃った。まずはその出場校と、甲子園での最高成績をみてみよう。

 北海道=東海大札幌センバツ準優勝)

 東北=聖光学院(福島=選手権4強)

 関東=横浜(神奈川=センバツ優勝3、選手権優勝2)

 東京=二松学舎大付センバツ準優勝)

 北信越敦賀気比(福井=センバツ優勝)

 東海=大垣日大(岐阜=センバツ準優勝)

 近畿=東洋大姫路(兵庫=選手権優勝)

 中国=広島商センバツ優勝1、選手権優勝6)

 四国=明徳義塾(高知=選手権優勝)

 九州=沖縄尚学センバツ優勝2)

甲子園ファイナリスト9校の豪華版

 実に甲子園優勝経験が6校準優勝経験3校というこれまでにないほどの豪華なメンバーが揃った。神宮大会が、現在のように地区大会優勝の10校で行われるようになったのが2002年からで、翌03年センバツから、神宮大会優勝校の所属地区が増枠となる「神宮枠」が与えられるようになった。以前の神宮大会は「お祭り」的な要素が色濃く、地区によっては優勝校以外の学校が出場することも少なくなかった。ちなみに近畿は、地区大会に出ていない数校で出場校決定戦をやっていた記憶がある。

「神宮枠」導入直後よりも伯仲した試合が増える

 この「神宮枠」をめぐっては、特に導入直後はさまざまな思惑も入り交じり、必ずしも全ての学校が全力を尽くしたとは思えないような例も散見された。また事実上、全校が翌春のセンバツに選ばれることになるので、「本番」を前に手の内を見せたくないというのも偽らざるところだろう。実際に、神宮で勝って、本番のセンバツでリベンジされた対戦もある。ただ最近は、頂点に立てば「全国優勝」には違いなく、「センバツへのアドバンテージにもなる」という発想から、以前よりも伯仲した試合が多くなった印象が強い。

東洋大姫路など、1回戦から登場組は優勝まで4勝必要

 さて肝心の展望であるが、10校という数の半端さから、1回戦が2試合、組まれることになり、ここに入った4校は、優勝するためには4勝が必要になる。仮に決勝まで勝ち残るとすれば、6日間で4試合という強行軍でもある。

1回戦

 A=聖光学院東洋大姫路

 B=東海大札幌大垣日大

準々決勝 

 C=明徳義塾-横浜

 D=沖縄尚学敦賀気比

 E=二松学舎大付-Aの勝者

 F=Bの勝者-広島商

準決勝

 Cの勝者-Eの勝者

 Fの勝者-Dの勝者

初戦の注目は明徳と横浜の激突

 最近は各地区大会もネット配信で見ることができるので、かなり客観的に展開予想ができる。初戦の注目カードは、明徳と横浜の対戦だ。甲子園でも凄まじい対戦があった両校だが、明徳は今夏の甲子園でも活躍した左腕・池崎安侍朗(2年)と里山楓馬(1年)のバッテリーが健在。対する横浜も、経験豊富な左腕の奥村頼人(2年)、本格派右腕の織田翔希(1年)の強力投手陣が看板だ。池崎は四国大会中に体調を崩して苦しい投球になったが、野手陣の奮起に助けられた。しっかり調整できれば、簡単には攻略されないだろう。横浜は関東大会で有力投手との対戦が続く中、要所で機動力や守備力の本領を発揮してスキのなさを見せた。3点をめぐる攻防か。

東洋大姫路の阪下は大会ナンバーワン

 この勝者に勝るとも劣らないのが近畿王者の東洋大姫路で、最速147キロ右腕の阪下漣(2年)は、近畿大会27回2/3でわずか1失点を誇り、今大会でも実力ナンバーワンと言っていい。特に走者を背負ってから簡単に決定打を許さない投球術は見もので、要所でギアを一気に上げる。近畿大会で好調だった打線が、しっかり援護できるかがカギだろう。初戦を突破しても、好投手・及川翔伍(2年)のいる二松学舎大付が待ち受ける厳しい組み合わせとなった。また、沖縄尚学敦賀気比も目の離せない試合になりそうだ。沖縄尚学の左腕・末吉良丞(1年)は、がっちりした体格から、最速150キロの直球を投げる。対する気比も1年生投手陣で、左腕の管田彪翔、右腕の五十子李壱(いがっこ・りいち)の継投策で対抗する。

「神宮覇者はセンバツで優勝できない」ジンクスは解消

 「神宮枠」ができてから、この大会の優勝校は、センバツで優勝できないというジンクスがあったが、3年前の覇者・大阪桐蔭が、翌春センバツでも頂点に立ち、嫌な流れを断ち切った。7日の東京大会を見ていると、寒さとの戦いも強いられそうで、猛暑時とは違ったコンディショニングも求められる。甲子園にはなかなか来られない関東のファンには、ぜひとも神宮に足を運んでいただき、シーズンの締めくくりとなる熱戦を楽しんでもらいたい。

 

 

高校野球あれこれ 第194号

[高校野球]気が早いですが……見えてきた来春センバツ出場校

2017年のセンバツ決勝は史上5回目の同一都府県対決

 来春、第97回選抜高校野球大会の出場校選考に重要な資料となる、10地区の秋季大会がほぼ終わった。九州大会は優勝が沖縄尚学、準優勝がエナジックスポーツ。沖縄から10年ぶりの2校出場となることがほぼ確実だ。地区大会の結果と地域性などを考慮すると、一般枠での選考は無風が予想され、下記のようになりそうだ。

■北海道(選考枠1)

優勝/◎東海大札幌

■東北(3)

優勝/◎聖光学院(福島) 準優勝/◎青森山田(青森) 4強/○花巻東

■関東・東京(6)

関東優勝/◎横浜(神奈川) 準優勝/◎健大高崎(群馬) 4強/◎浦和実(埼玉) 4強/◎千葉黎明(千葉) 東京は早稲田実二松学舎大付が決勝に進出。優勝校は確定で、早稲田実の優勝なら6校目は東農大二(群馬)か。二松学舎大付の優勝なら、6校目は微妙

■東海(3)

優勝/◎大垣日大(岐阜) 準優勝/◎常葉大菊川(静岡) 4強/○至学館(愛知)

北信越(2)

優勝/◎敦賀気比(福井) 準優勝/◎日本航空石川(石川)

■近畿(6)

優勝/◎東洋大姫路(兵庫) 準優勝/◎智弁和歌山(和歌山) 4強/◎天理(奈良) 4強/◎市和歌山(和歌山) 8強/○大阪学院大(大阪) 8強/○滋賀の滋賀学園もしくは滋賀短大付

■中国(2)

優勝/◎広島商(広島) 準優勝/◎米子松蔭(鳥取)

■四国(2)

優勝/◎明徳義塾(高知) 準優勝/◎高松商(香川) 

■九州(4)

優勝/◎沖縄尚学(沖縄) 準優勝/◎エナジックスポーツ(沖縄) 4強/◎柳ヶ浦(大分) 4強/◎西日本短大付(福岡)

 創部101年目の千葉黎明、対照的に3年目のエナジックスポーツ、さらに浦和実も春夏通じて初めての甲子園になりそう。大阪学院大は、出場すれば久々、29年ぶりになる。

アベック出場未達成県は……?

 原則として1県1代表の夏と違い、センバツでは例年、いくつかの都道府県からアベック出場がある。2024年なら北海道から北海と別海(21世紀枠)、青森から青森山田八戸学院光星、愛知から豊川と愛工大名電、石川から星稜と日本航空石川、京都から京都国際と京都外大西、和歌山から耐久と田辺(21世紀枠)がそれで、出場32校中12校を占めた。来年のセンバツでは和歌山、沖縄からの2校出場がほぼ確実だ。

 大正初期から隆盛する中学野球人気を受け、もう一つ全国大会を開催したらどうか……と、センバツの前身にあたる「全国選抜中等学校野球大会」が創設されたのは1924年。ただ、全国大会をうたいつつ当初は招待試合の色が濃かった。当時は夏の代表枠が少なかったから、実力校の多い地区では、全国大会出場にふさわしい力があっても、基本的に一発勝負の地方大会で敗退することもある。そこで地域の枠にあまりとらわれず、真の実力があると見られるチームを選考委員が選ぶ、という形式で夏の大会との差別化を図った。

 第1回の出場8校は、いずれも異なる都府県からの出場だったが、第2回以降は同県から2校どころか3校出場もザラで、1県から4校出場なんてこともあった。たとえば33年には、出場32校のうち和歌山県から海南中、海草中(現向陽)、和歌山商、和歌山中(現桐蔭)、37年には20校のうち愛知県から中京商(現中京大中京)、享栄商(現享栄)、愛知商、東邦商(現東邦)の4校が出場している。

 これに対し、北海道からの初出場が第15回大会、38年の北海中だったのはまだいいとして、東北からの初出場は戦後、55年の一関一(岩手)まで待たなくてはならない。東北が冷遇されたのは、地域間の実力差がそれだけ顕著だと見られていたのだろう。草創期のセンバツ出場校をながめると、ほとんど関東、東海、近畿、四国のチームで争われていたといっていい。

 現在では、21世紀枠を除き、一般枠での選考は1県最大2校までという内規がある。18年のセンバツでは滋賀から近江、彦根東が一般枠で選考され、21世紀枠膳所を加えて3校が出場したが、これはきわめてレアケースだ。このときの滋賀は初めてのアベック出場で、23年のセンバツでは長崎も初めてアベック出場。いまだに2校同時出場を果たしていない県は、北から山形、富山、鳥取、島根の4県のみだ。

 もっとも、21世紀枠での出場を除く一般選考での2校出場となると、未達成の県がいくつか増える。21世紀枠込みのアベック出場は(県名、出場年と出場校、○は21世紀枠)、

・岩手 2017 盛岡大付 ○不来方

・福島 2013 聖光学院 ○いわき海星

    2022 聖光学院 ○只見

・新潟 2011 日本文理 ○佐渡

 この3県から一般選考で2校選ばれるには、東北・北信越それぞれの秋季地区大会で優勝し、ベスト4にもう1校入るのが最低条件だろう。ただ北信越なら石川、福井、東北なら宮城や青森などライバルが強力で、一般選考でのアベック出場には3県ともなかなかハードルが高い。新潟はそもそも、47都道府県のうち唯一、令和になってのセンバツ出場がなく、アベックどころかまずは1校でも出場したい。

 ほかに山形、島根も、中止になった20年のセンバツに選考されていたから記録上は令和の出場「あり」だが、実際は試合をしていない。もし山形中央が選出されれば、山形にとって令和のセンバツでは初の試合となる。来春センバツの出場がなさそうな宮崎は、唯一令和の甲子園未勝利県。初勝利は、来夏以降に持ち越しになりそうだ。

 

 

高校野球あれこれ 第193号

高校野球秋季近畿大会結果と

2025年センバツ出場校予想

 

東洋大姫路智弁和歌山を下して優勝

2025年の第97回選抜高校野球大会の選考資料となる秋季大会が各地で行われている。近畿大会は11月4日に決勝が行われ、東洋大姫路(兵庫1位)が5-1で智弁和歌山(和歌山1位)を下して17年ぶり4回目の優勝を果たした。

97回目の春は近畿から6校選出されるため、東洋大姫路の3年ぶり9回目のセンバツ出場は確実と見られる。


決勝は東洋大姫路が3回に4点を先制。4回にも1点ずつを取り合うと、プロ注目のエース阪下漣が1失点完投した。初戦で龍谷大平安(京都2位)を9-0(7回コールド)、準々決勝で大阪学院大高(大阪3位)を4-0、準決勝で天理(奈良1位)を11-3(7回コールド)と全て完勝する強さだった。

東洋大姫路は11月20日に開幕する明治神宮大会に出場。かつて履正社を率いて全国制覇した東洋大姫路の岡田龍生監督は、2022年春に母校の監督に就任してから初めての甲子園となる。

智弁和歌山センバツ当確、天理と市和歌山も濃厚

準優勝の智弁和歌山も2年ぶり16回目のセンバツは当確。準々決勝で滋賀学園(滋賀1位)を7ー2、準決勝で市和歌山(和歌山3位)との同県対決を6-1と快勝して高い実力を証明した。2024年夏に続く2季連続の甲子園で進撃が期待される。

ベスト4入りした天理と市和歌山も順当に選ばれるだろう。天理は準決勝で東洋大姫路にコールド負けしたものの、初戦で和歌山東(和歌山2位)を5-1、準々決勝で滋賀短大付(滋賀2位)を4-1と安定した試合運び。市和歌山も三田学園(兵庫3位)と立命館宇治(京都1位)に完封勝ちしている。出場なら天理は3年ぶり27回目、市和歌山は3年ぶり9回目となる。

残り2校は準々決勝で敗れた4校からの選考となりそうだが、市和歌山に0-10で6回コールド負けした立命館宇治は脱落しそう。1927年の第4回大会以来98年ぶりに大阪から選ばれない可能性もあるが、大阪学院大高が敗れた東洋大姫路が強い勝ち方で頂点に立ったことから滑り込む可能性が高いと見る。

滋賀の両校では、滋賀短大付は初戦で履正社(大阪1位)を破ったものの、準々決勝で敗れた天理が準決勝でコールド負けしたこともあり、滋賀県大会優勝の滋賀学園に分がありそうだ。大阪学院大高なら29年ぶり2回目、滋賀学園なら8年ぶり3回目、滋賀短大付なら春夏通じて初の甲子園となる。

97回目のセンバツは例年と同じ32校が出場。2025年1月24日に行われる選考委員会で一般選考29校、21世紀枠2校、神宮大会枠1校の計32校が決定する。3月7日に組み合わせ抽選が行われ、3月18日に開幕する。

 

 

高校野球あれこれ 第192号

高校野球秋季関東大会結果と

2025年センバツ出場校予想

 

横浜が健大高崎を下して優勝

2025年の第97回選抜高校野球大会の選考資料となる秋季大会が各地で行われている。関東大会は11月4日に決勝が行われ、横浜(神奈川1位)が4-3で健大高崎(群馬1位)にサヨナラ勝ちして17年ぶり4回目の優勝を果たした。

97回目の春は関東から4校、東京との比較で1校選出されるため、横浜の6年ぶり17回目のセンバツ出場は確実と見られる。


決勝は健大高崎が1回に先制し、横浜が6回に追いつくと、7回にも2点ずつを取り合う白熱の大接戦。同点のまま突入したタイブレークの延長10回裏、健大高崎は先発マウンドからレフトに回っていた最速158キロ右腕・石垣元気を再びマウンドに戻したが、横浜・奥村凌大がサヨナラ打を放ち、熱戦に終止符を打った。

横浜は11月20日に開幕する明治神宮大会に出場。近年は東海大相模や慶応の陰に隠れていたが、名門が久々に存在感を発揮できるか。

健大高崎センバツ当確、浦和実と千葉黎明も濃厚

準優勝の健大高崎も3年連続8回目のセンバツは当確。決勝はサヨナラ負けしたが、実力差は紙一重だ。プロのスカウトが熱視線を送る石垣元気は注目の的だろう。2024年センバツ王者が全員で優勝旗を返しに行く。

ベスト4入りした浦和実(埼玉1位)と千葉黎明(千葉1位)もセンバツ濃厚だ。浦和実は初戦で宇都宮工(栃木2位)を4-2、準々決勝でつくば秀英(茨城1位)を2-0で破り、準決勝でも優勝した横浜に2-3と惜敗。来春センバツに選ばれれば春夏通じて初の甲子園となる。

千葉黎明も準決勝こそ健大高崎に完封負けだったが、準々決勝で2023年センバツで優勝した山梨学院(山梨1位)を5-2で撃破。浦和実とともに春夏通じて初めての甲子園に大きく前進した。

5校目は東京との比較になるが、準々決勝で敗れた4校の中から候補が絞られるだろう。佐野日大(栃木1位)は健大高崎戦の7回コールド負けが割引材料。初戦をコールド勝ちし、準々決勝でも優勝した横浜と接戦を演じた東農大二(群馬2位)も候補だが、健大高崎と同じ群馬県から2校選ばれるかどうか。

茨城大会優勝のつくば秀英、初戦で東海大相模(神奈川2位)を下した山梨学院の争いと見る。

97回目のセンバツは例年と同じ32校が出場。2025年1月24日に行われる選考委員会で一般選考29校、21世紀枠2校、神宮大会枠1校の計32校が決定する。3月7日に組み合わせ抽選が行われ、3月18日に開幕する。

 

 

 

 

高校野球あれこれ 第191号

来春センバツで「53年ぶりの珍事」起きるか!?複数選出の都道府県2つのみの可能性!【25年センバツへの道】

 

来年2025年春のセンバツ選考の重要参考資料となる秋季地区大会は11月から、終盤戦に突入する。3日までに関東、東京、近畿、中国、四国、九州地区の決勝が行われ、7日の東京で全大会が終了する予定となっている。

ここまで、すでに秋季大会上位成績を収め、来年センバツ出場へ大きく前進しているのは、19校。そのうち、和歌山、沖縄では2校ずつが入った。和歌山は市和歌山と、智弁和歌山。沖縄はエナジックスポーツ、沖縄尚学。実は、もし、来年のセンバツ出場校で、同一都道府県からの複数校選出が、この2県のままとすれば、1971以来、54年ぶりのことになる。

今後、準決勝が予定されている中国と四国は重複する県がなく、同一県から複数校が「当確」することはない。東北も4強に入っている高校の県の重複はない。可能性があるのは東京に加え、東海、関東、近畿。関東で群馬、近畿で滋賀、東海で岐阜から複数選出の可能性はある。もちろん、21世紀枠明治神宮枠での選出もあり、複数選出は増えるかもしれないが、このまま2県だけの可能性も十分あるとみている。

今年は大阪3校が近畿4強に残れなかった。もし来年のセンバツに大阪勢が選出されなかったら、98年ぶりになる。九州では鹿児島勢、東北では宮城勢がそれぞれ4強に入れなかった。

その一方で、沖縄のエナジックスポーツや、関東の浦和実(埼玉)、千葉黎明(千葉)のように、初めてセンバツに出場する可能性が高い「新たな顔」も増えている。各都道府県の強豪校の高い壁をしっかり乗り越えてきている。

まだまだ途中経過ではあるが、今年の秋季大会全体を見渡すと、地区で勝ち上がった高校が一定の都道府県に固まらずに分散されている傾向があるような印象がある。四国は顕著な例で、この秋季大会では4県からそれぞれ県の優勝校が4強に入った。

26校選出時代だった53年前、同一複数校選出の都道府県は、大阪(近大付、大鉄=現・阪南大)と奈良(郡山、一条)だった。32校選出がスタンダードになった1983年以降、同一選出の都道府県が「3」だったことも、3度しかない。2017年は9都道府県(岩手、群馬、東京、大阪、兵庫、奈良、高知、福岡、熊本)から複数選出されたこともあった。

もしかしたら、来年のセンバツ出場校は、近年まれな「地域分散型」の顔ぶれとなるかもしれない。

 

 

 

 

 

高校野球あれこれ 第190号

「大阪2強」が滋賀勢に連敗の衝撃!波乱の近畿大会は4強が決まり、センバツに大阪ゼロの危機?

大阪桐蔭滋賀学園に逆転負けを喫し、6年連続のセンバツ出場が遠のいた

 開幕戦で履正社(大阪1位)が、近畿大会初出場の滋賀短大付(滋賀2位)に1-4で敗れたのに続き、近畿大会3連覇中の大阪桐蔭(大阪2位)も、今夏甲子園8強の滋賀学園(滋賀1位)に2-3で逆転負け。6年連続のセンバツ出場が絶望的になった。「大阪2強」と称される両校が、揃って近畿大会の初戦で敗れるのは初めて。しかも相手がいずれも近畿で唯一、甲子園優勝経験のない滋賀代表とあって、これはもう衝撃としか言いようがない。

メンバー一新の滋賀学園に対し、大阪桐蔭はダブルエース健在

 滋賀学園夏の甲子園後、野手メンバーは一新。投手も、甲子園で好投した土田悠貴(2年)が不調に陥り、新エースの長崎蓮汰(2年)はベンチ入りしていただけ。大阪桐蔭はいずれも2年生の森陽樹中野大虎(だいと=主将)のダブルエースだけでなく、1番を打つ宮本楽久(がく)、3番の畠中健太、捕手の増田湧太ら、甲子園経験者も多く、経験値は比較にならない。大阪2位と言っても、実力は全国でもトップクラス。まさに高校球界の頂点に君臨するチームだ。

まさかの押し出しから逆転され、終盤に打線が援護できず

 試合は大阪桐蔭の森が3回まで、1安打4奪三振と絶好の立ち上がり。4回に滋賀学園5番・吉森爽心(1年)に2死から適時打を浴びるも、3番・畠中の同点打、5番・増田のスクイズ(記録は適時内野安打)ですかさず逆転した。しかし6回、先頭の振り逃げ(記録は捕逸)から得点圏に走者を背負うと、大阪桐蔭西谷浩一監督(55)は、「タイミングが合っている」という吉森に申告敬遠を指示。これが裏目に出て、森は連続四球を与え押し出しで同点。さらに8番・藤本聖(2年=主将)の適時打で2-3と、逆転を許した。その後は中野が1安打無失点と好投したが、打線が滋賀学園の長崎を攻めきれず、わずか1点を追いつくことができなかった。

大阪桐蔭・森のこの日の最速は147キロ。6回に失点した場面について西谷監督は、「うまくつないでやれなかった」と話した。逆転後のピンチで登板の中野がその後、好投しただけに惜しい試合だった(筆者撮影)
大阪桐蔭・森のこの日の最速は147キロ。6回に失点した場面について西谷監督は、「うまくつないでやれなかった」と話した。逆転後のピンチで登板の中野がその後、好投しただけに惜しい試合だった

 西谷監督は、「勝たないといけない試合。負けたので、夏に向けてやるしかない。森は大阪大会よりも調子が上がっていたので先発させた。(押し出しの)四球を出すとは思っていなかった」と、淡々と振り返った。滋賀学園との力関係で言えば、ダブルエースで3失点(自責1)は問題なく、夏の小松大谷(石川)戦の完封負けが尾を引いているのか、打線の迫力不足、決定力不足が気になる。新バットへの対応が、夏までの課題だろう。

智弁和歌山は鮮やかに完封リレーを完成

 最後の登場となった智弁和歌山(和歌山1位)は、神戸学院大付(兵庫2位)を攻守に圧倒した。初回に5番・山田凛虎(りとら=1年)の適時二塁打で先制すると、4回にはスクイズと相手の失策でリードを広げる。投げてはエース・渡辺颯人(はやと=1年)が、足に打球直撃されながらも6回を6安打無失点。7回からは最速152キロの剛腕・宮口龍斗(2年)が危なげなく締め、完封リレーを完成させた。中盤にも中軸に適時打が出て5-0の完勝に、智弁和歌山中谷仁監督(45)は、「バッテリー中心に、守り勝てればいいと思っていた。バントやスクイズの練習も多めにやっている」と、会心の勝利に満足そうだった。

神戸学院大付のエース・浅中翔達(2年)は7回途中を9安打5失点(自責3)と奮闘。岩上監督も「浅中はよく投げた」と評した。近畿大会は3年ぶりの出場だったが、初勝利はお預けとなった(筆者撮影)
神戸学院大付のエース・浅中翔達(2年)は7回途中を9安打5失点(自責3)と奮闘。岩上監督も「浅中はよく投げた」と評した。近畿大会は3年ぶりの出場だったが、初勝利はお預けとなった

 一方、5失策と看板の守りが崩れた神戸学院岩上昌由監督(48)は、「ミスも含めて、もっと野球を上手にならないと。これから戦う集団にしていく」と、再起を誓った。

滋賀短は天理に4回以降、無安打に抑えられる

 これで8強が出揃い、滋賀と和歌山が2校、その他が1校ずつで、勝てばセンバツ当確となる準々決勝へと進む。近畿はこの準々が最大の選考ポイントになるが、まずは、初戦で履正社を破って勢いに乗る滋賀短が、近畿大会最多の優勝9回を誇る天理(奈良1位)に挑んだ。2回に先制された滋賀短は3回表、5番・峯悠汰(1年)が、天理のエース・下坊大陸(2年)から同点打を放ち、すかさず追いつく。

滋賀短大付の櫻本は天理を相手に粘りの投球。保木監督も「試合をまとめ切る力がついた」と成長を認めた。選手はほぼ全員が自宅通学で、グラウンドもあまり広くないが、滋賀の新鋭として注目されそうだ(筆者撮影)
滋賀短大付の櫻本は天理を相手に粘りの投球。保木監督も「試合をまとめ切る力がついた」と成長を認めた。選手はほぼ全員が自宅通学で、グラウンドもあまり広くないが、滋賀の新鋭として注目されそうだ

 しかし、頼みの左腕・櫻本拓夢(2年)が制球に苦しんで四球や失策から失点し、主導権を渡した。4回以降は天理の二番手・伊藤達也(2年)から5つの四死球を得ただけで無安打に抑えられ、1-4で敗れた。滋賀短の保木(ほうき)淳監督(39)は、「序盤のチャンスでもう1本出ていれば。でも履正社、天理という全国トップクラスのチームとやれて、技術的、精神的に成長できた」と、収穫を強調していた。立ち上がりは優勢だっただけに、3回までの5残塁はもったいなかったが、初出場で大健闘と言っていいだろう。

大院大高は、東洋大姫路のエースに力負け

 大阪の最後の砦となった大阪学院大高(大阪3位)は、優勝候補の東洋大姫路(兵庫1位)に投打で力負けした。先発の下條晃大(2年)は2回に3安打を浴びて失点したが、その後よく耐え、味方の反撃を待つ。5回にようやく相手エースの阪下漣(2年)から、先頭の4番・樋爪(といづめ)信(1年)が二塁打で出て初めての得点機を迎えたが、続く三者が倒れ、追いつけなかった。直後の6回に、東洋大姫路スクイズと1、2番の連続適時打で突き放し、4-0で快勝。阪下は2試合連続の完封となった。

大阪大会で大阪桐蔭を3点に抑えた大院大高の下條は、近畿大会初戦で北稜(京都)を完封。東洋大姫路には打たれたが、よく粘った。この好投が評価されて29年ぶりのセンバツ出場なるか(筆者撮影)
大阪大会で大阪桐蔭を3点に抑えた大院大高の下條は、近畿大会初戦で北稜(京都)を完封。東洋大姫路には打たれたが、よく粘った。この好投が評価されて29年ぶりのセンバツ出場なるか

 敗れた大院大高の辻盛英一監督(48)は、「5回まではプラン通りだったが、6回の3点が痛かった。体力、パワー、マインドも全て、全国で通用する力をつけたい」と話したが、阪下の球威に押される場面が目立っていた。5回に追いついていれば、展開も違っただろう。また二番手で投げた背番号1の山本凌青(2年)が、3回をパーフェクトに抑える好投は見事だった。

市和歌山は打線爆発で、立宇治にコールド勝ち

 続く試合は予想外の展開となった。初戦で1得点に終わった市和歌山(和歌山3位)の打線が大爆発。初回に5安打で2点を奪うと、その後も攻撃の手を緩めず、立命館宇治(京都1位)のエース・道勇壱心(2年)から4回までで9安打4得点。代わった最速146キロの右腕・柴田淳之介(2年)からも4点を奪うなど猛攻は止むことなく、一方的な試合となった。仕上げに6番・川辺謙信(2年=主将)が、大会第1号を放って、市和歌山が6回コールドの10-0で圧勝した。市和歌山はエース・土井源二郎(2年)が5回まで無安打投球で、6回を2安打無失点。2試合連続の完封勝利となった。本塁打を放った川辺は、新チームスタート時は4番を打っていて、半田真一監督(44)が、「背負うタイプなので、主将、捕手で4番だと負担が大きい」と、気楽に打てる6番に下げたのが奏功。この日は4打数4安打3打点の大活躍だった。

故障で戦列を離れていた立宇治の柴田は、140キロを超える直球を投げたが、市和歌山に打ち込まれた。里井監督は「逆風を止められるだけの準備、技量がなかった」と話したが、今後に期待を持たせた(筆者撮影)
故障で戦列を離れていた立宇治の柴田は、140キロを超える直球を投げたが、市和歌山に打ち込まれた。里井監督は「逆風を止められるだけの準備、技量がなかった」と話したが、今後に期待を持たせた

 まさかの完敗となった立宇治の里井祥吾監督(41)は、「相手の打力が凄まじかった。踏み込んで逆方向への長打など、新バットになって一番、打ち込まれた試合だった」と、17安打10得点の相手打線に脱帽していた。

滋賀学園は甲子園で好投の土田が復調ならず

 準々決勝最後の試合は、前日との連戦になる。滋賀学園は初回、智弁和歌山のエース・渡辺を攻めて2点を先制する。この日は土田が先発したが、先頭に四球を与え、あっさり失点すると、3回までに4点を失って、山口達也監督(53)の期待に応えられなかった。一方の渡辺は尻上がりにテンポもよくなり、2回以降は散発の4安打でゼロを並べた。最終スコアは7-2だったが、滋賀学園には明らかに前日の疲れが残っているように見えた。

滋賀学園の1年生5番打者の吉森は、大阪桐蔭戦の適時打に続き、智弁和歌山戦でも3安打。山口監督は「振れるし、バットコントロールもいい。秋に成長したのは(エースの)長崎と吉森」と評価した(筆者撮影)
滋賀学園の1年生5番打者の吉森は、大阪桐蔭戦の適時打に続き、智弁和歌山戦でも3安打。山口監督は「振れるし、バットコントロールもいい。秋に成長したのは(エースの)長崎と吉森」と評価した

 山口監督は「条件は同じ」と、言い訳にしなかったが、大阪桐蔭に勝った翌日に智弁和歌山と当たるのは、心身ともにかなり厳しい。打たれた土田は、捕手の太田陽人(2年)に抱きかかえられながら引き上げたあとも、「ほんまにごめん」と号泣していた。本人が「新チームが始まってから思うような投球ができず、『こんなはずじゃない』と思いながら投げている」と話すように、山口監督も甲子園の残像と戦う土田の姿を目の当たりにしてきた。山口監督は、「この敗戦を糧にしてほしい」と、元エースの復活を願っている。

4強プラス、滋賀1校は確実だが…

 これで4強が決まり、天理、東洋大姫路、市和歌山、智弁和歌山センバツ出場は確実になった。残る2校は、8強敗退組から選ばれるのが通例で、ともに8強で敗退した滋賀勢のうち、1校はまず選ばれるだろう。また、痛恨のコールド負けを喫した立宇治はかなり厳しい状況で、大阪で唯一、残った大院大高は「地域性」で浮上するか。ただ、近畿大会2試合トータルの内容では、「大阪2強」を倒した滋賀勢には及ばない。近畿大会の終了後に、さらに深めて検証したい。

 

 

 

 

 

高校野球あれこれ 第189号

高校野球秋季東北大会結果と2025年センバツ出場校予想

 

聖光学院青森山田を下して優勝

2025年の第97回選抜高校野球大会の選考資料となる秋季大会が各地で行われている。東北大会は10月20日に決勝が行われ、聖光学院(福島1位)が3-2で青森山田(青森1位)を下して7年ぶり2回目の優勝を果たした。

97回目の春は東北から3校選出されるめ、聖光学院の3年ぶり7回目、青森山田の2年連続4回目のセンバツ出場は確実と見られる。


決勝は青森山田が初回に2点を先制したが、聖光学院は2回に同点に追いつくと、7回に1点を勝ち越し。先発マウンドに立った左腕・大嶋哲平が8回途中2失点に抑え、管野蓮に継投してリードを守り切った。

聖光学院は11月20日に開幕する明治神宮大会に出場。夏は2001年の甲子園初出場から19回出場と21世紀の福島県代表をほぼ独占しているが、センバツは来春出場が決まれば7回目となる。

青森山田センバツ当確、3校目は花巻東有利?

準優勝の青森山田も2年連続4回目となるセンバツ出場は間違いないだろう。決勝では惜敗したが、準決勝では花巻東(岩手2位)に完勝するなど実力を発揮。昨年は春夏連続で甲子園に出場して春8強、夏4強に進出したメンバーが残っており、来春も出場すれば躍進が期待される。

3校目は、ベスト4入りした花巻東山形中央(山形3位)が有力候補に挙がるだろう。昨夏の甲子園に出場した花巻東は、巨人の古城茂幸三軍打撃コーチを父に持つ古城大翔が4番を務め、秋田商(秋田1位)、鶴岡東(山形1位)と県大会王者を撃破。一方の山形中央は大曲工(秋田3位)、一関学院(岩手1位)、日大山形(山形2位)相手に3勝しているが、準決勝で聖光学院に1-7と完敗だったことをどう見るか。

花巻東なら3年ぶり5回目、山形中央なら12年ぶり3回目となる。

97回目のセンバツは例年と同じ32校が出場。2025年1月24日に行われる選考委員会で一般選考29校、21世紀枠2校、神宮大会枠1校の計32校が決定する。3月7日に組み合わせ抽選が行われ、3月18日に開幕する。

 

 

 

 

 

高校野球あれこれ 第188号

夏の甲子園スカウト陣の評価を急上昇させた“3選手の実名”

 

今年の夏の甲子園は、京都国際が関東第一を2対1(延長10回タイブレーク)で破り、初優勝を飾った。高校生のドラフト候補には、最後の大きなアピールの場となった今大会。どんな選手がスカウト陣に評価されたのだろうか。

大会前は有力なドラフト候補が少ないと言われていたが

 上位指名の可能性が高いのは、報徳学園の最速151キロ右腕・今朝丸裕喜を筆頭に、東海大相模の198cm左腕・藤田琉生、花咲徳栄の大型ショート・石塚裕惺、健大高崎の強肩捕手・箱山遥人だ。

 報徳学園花咲徳栄は初戦で、健大高崎は2回戦で敗れたが、今朝丸と石塚、箱山は、それぞれの持ち味を発揮して、高い評価は変わらない。藤田は、先発でフル回転。チームを準々決勝進出に導き、スカウト陣の評価を上げたといえるだろう。

 大会前には、この4人を除いて有力候補が少ないと言われていたが、スカウト陣の評価を急上昇させた3人の選手がいる。

「映像で見るより、いい選手」

 1人目は、早稲田実のショート、宇野真仁朗だ。初戦の鳴門渦潮戦、第1打席にいきなりレフト前へ弾き返すと、一気に加速して二塁を陥れる好走塁を見せた(記録はツーベース)。二死満塁で迎えた続く第2打席は、レフトフェンス直撃の3点タイムリーツーベース、第5打席ではレフト前ヒットと、3安打3打点1盗塁の活躍を見せた。

 宇野が評価される大きなポイントは、今春から木製バットを使用していること。木製バットは、金属バットに比べて芯が狭く、強い打球を放つには、高い技術が必要だ。

 高卒のプロ選手は、入団後に木製バットにうまく対応できずに苦しむケースがあるが、木製バットを使いこなす宇野は、そのリスクが低い。宇野を視察したセ・リーグ球団のスカウト幹部は、以下のように話す。

「現地で、宇野君のプレーは初めて見ましたが、映像で見るより、いい選手ですね。担当スカウトによると、守備に課題があると報告を受けていましたが、内野手としての動きは、全く悪くありません。盗塁のスタートもよかった。守備も走塁も判断がよく、高い野球センスを感じますね」

 2回戦と3回戦ではノーヒットに終わり、大会を通じての成績はもうひとつだったものの、多くのスカウトが視察した初戦でアピールに成功したことは、大きなプラス材料だ。

 3回戦敗退後、「(今後の進路は)まだ決めていない。(和泉実)監督と話しながら決めたい」と語った宇野。現時点で進路は不透明だが、プロ志望届を提出すれば、高い順位で指名される可能性が高そうだ。

攻守ともレベルアップした、こちらもショートの注目選手

 野手でもう1人。スカウト陣が有望株にあげるのは、宮崎商の中村奈一輝だ。スポーツメーカーの“NIKE(ナイキ)”が名前の由来となったことでも話題になった大型ショートである。

 

 チームは初戦で中京大中京に競り負けたが、たびたび軽快な守備を披露。レフト前に鋭く弾き返すヒットも放つなど、持ち味を発揮した。

「あれだけ大型の選手(身長183cm)でも動きに軽さがあるところがいいですね。細かいステップが下手な長身の選手は多いですが、中村はしっかりしています。肩も強いし、打撃ではリストの強さがある。(体重は70kgで)高校生のなかでも細いですが、しっかり体ができてくれば、打撃も守備もまだまだ良くなってくると思います」(パ・リーグ球団スカウト)

 筆者は、今年5月に行われた練習試合を中村のプレーを見た。この時は、打撃では、踏み出した左足が三塁側に寄り過ぎる“アウトステップ”の傾向が強すぎて、腰が引けるスイングが多かった。一方、守備の動きは良かったが、雑なプレーも目に付いた。

 しかし、今大会では、これらの課題が解消されており、攻守ともにかなりレベルアップした印象を受けた。プロ球団にとって、運動能力が高い大型ショートは魅力的な選手だ。最後までドラフトの指名リストに残す球団も多いだろう。

元は野手だった190cmの大型右腕

 最後は投手。聖カタリナの190cm右腕、有馬恵叶である。本格的に投手に転向したのは、高校入学後。公式戦の登板は、夏の愛媛大会が初めてという“遅咲きの投手”だ。今大会で自己最速を3キロ更新する146キロをマークした。チームは、初戦で岡山学芸館に0対1と競り負けたものの、有馬は7回2/3を投げて自責点0で見事なピッチングを披露した。

 パ・リーグ球団スカウトは、驚きを隠さない。

「こんなピッチャーが、この夏まで投げていなかったとは驚きですね。(長身の選手は、投げるバランスが悪いことが少なくないが)有馬はバランスが良いですし、落ちる変化球も上手く投げていました。投手に転向する前は、外野手だったみたいですけど、走る姿もいいし脚力もある。しっかり鍛えたら、ビックリするようなボールを投げるようになりそうですね」

 有馬は試合後、育成でもプロ入りを目指す考えを表明した。今年は、高校生の有望選手が多く、支配下指名の枠は限られる。このため、育成選手を多く抱える球団にとっては、狙い目となる選手になりそうだ。

 今回、取り上げた選手たちが、果たして、どの球団から指名されるのか。引き続き、動向をチェックしていきたい。

 

 

 

 

 

高校野球あれこれ 第187号

[高校野球]甲子園。

47都道府県すべてと対戦して勝ち星があるのはどこ?

 この夏の甲子園では、大社(島根)が旋風を起こした。初戦でセンバツ準優勝の報徳学園(兵庫)を下すなどで、ベスト8進出。実はこのジャイキリ、夏の甲子園で島根が兵庫から挙げた初めての白星でもあった。ほかにも、小松大谷が大阪桐蔭を破り、過去夏の甲子園で大阪に5連敗していた石川が、初勝利を記録している。

 高校野球は、今週末から順次、秋季地区大会が始まる。来春センバツの出場がかかる大会だから、ここからが秋の本番だ。この地区大会、地区によってはリーダー的な県がある。たとえば東北の宮城、北信越の福井あたりで、福井なら、出場枠が2の北信越にあって、敦賀気比が4年連続でセンバツ出場を果たしているのだ。

 参考までに、北信越同士の甲子園での対戦を調べると、福井は夏の甲子園で新潟、長野、富山と6回対戦し、5勝1敗(石川とは対戦なし。センバツも同様)。もちろん、秋季大会と甲子園はまた別物だけど、北信越5県の力関係を示す一例ではあるかもしれない。

やはり強いのは大阪、それと……

 都道府県別の甲子園での対戦成績を眺めると、なかなか興味深い。で、ちょっと調べてみた。47都道府県すべてと甲子園で対戦した都道府県はどのくらいあるのか。センバツでいまだアベック出場のない山形、富山、鳥取、島根は、夏も2校以上の出場がないため、対象外となる。逆に南北、東西と夏に2校が出場する北海道や東京、あるいはセンバツに複数校がひんぱんに出場したり、夏の記念大会で2校が出場する府県は、それだけ全都道府県と対戦する率が上がる。

 全都道府県と対戦があるのは北海道/東京/愛知/大阪/兵庫の5都道府県。南北北海道は1994年夏に対戦があり、東京同士は春が1回と夏が3回。72年のセンバツでは決勝が日大桜丘日大三の兄弟校対決となり、桜丘が優勝している。愛知はセンバツで戦前に4回対戦し、決勝が2回、準々決勝と準決勝が1回ずつだから、当時の強さは抜きん出ていた。大阪対戦はセンバツで2回あり、2017年は大阪桐蔭履正社が決勝で戦っている。兵庫同士もセンバツで4回対戦しているが、これもすべて戦前の記録。つまり、春夏ともに全都道府県と対戦しいているのは、東京のみということになる。愛知、大阪、兵庫は、夏に2校出場したのが記念大会の3回だけだから、まあ夏の対戦がなくても無理はないか。

 当然ながら、甲子園でたくさん試合しているほど各都道府県と対戦する可能性は上がるわけで、たとえば甲子園での試合数ランキングは大阪、東京、兵庫、愛知が1〜4位だ。勝利数のランキングも同様。

①大 阪 400勝233敗5分け

②東 京 324勝272敗2分け

③兵 庫 324勝251敗3分け

④愛 知 310勝209敗3分け

 自府県以外の46都道府県と対戦があるのが千葉、奈良、広島、香川、徳島、福岡、長崎、鹿児島の8県。広島、福岡、奈良、千葉、徳島、香川あたりは通算勝利数でも20位以内に入るから、それだけ試合数も増えてまんべんなく対戦するのはおかしくないが、長崎は勝利数ランキングは33位で、試合数はトータル168。それでいて46都道府県と対戦するというのは、ある種、クジ運に恵まれているといっていい。たとえば、長崎より多い219試合を戦っている長野は、群馬、埼玉、新潟の3県とまだ対戦がないのだ。

 以上の13都道府県で、全都道府県から勝ち星を記録しているのはたったひとつ、大阪だけだ。ただ大阪は、負け越している相手も意外と多くて群馬、愛知、岐阜、京都、広島、香川。愛知には19勝25敗(2分け)と分が悪く、ちなみにこの対戦の計46試合は、愛知対兵庫と並んで全組み合わせ中最多だ。自県を除くすべてから白星があるのが広島で、千葉は新潟に勝てばこれに並ぶ。

 自都道府県との対戦は星を分けるので、すべての都道府県に勝ち越すのは不可能だとして、どこに対しても勝率5割以上という都道府県は、さすがに皆無だ。だが北海道・東北、関東・東京、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州という8地区別での対戦成績で見てみると、大阪がすべてに勝ち越し。神奈川は、19勝19敗の四国以外、すべてに勝ち越している。ほかにも、強いといわれる県が意外な県を苦手としていたり、県別の甲子園での対戦成績、なかなかおもしろいですよ。

 

 

 

 

 

高校野球あれこれ 第186号

夏の甲子園ベストナイン ドラフト候補が揃う遊撃手で今大会最も輝いたのは…

ピッチャーは右投手と左投手を1人ずつ選出

 

 選抜優勝の健大高崎、準優勝の報徳学園など前評判の高かったチームの多くが大会序盤に姿を消し、例年以上に混戦という印象が強い今大会。ドラフト候補としての評価ではなく、あくまで今大会での活躍ぶり、インパクトを基準としてベストナインを選ぶと、以下の顔ぶれとなった。ピッチャーについては右投手と左投手を1人ずつ選出している。

右投手:坂井遼(関東第一3年)

左投手:藤田琉生(東海大相模3年)

捕手:熊谷俊乃介(関東第一3年)

一塁手:越後駿祐(関東第一2年)

二塁手:柴田元気(東海大相模2年)

三塁手:高崎亘弘(早稲田実3年)

遊撃手:藤本陽毅(京都国際3年)

外野手:中村龍之介(東海大相模2年)

外野手:佐藤隆樹(青森山田2年)

外野手:長谷川颯(京都国際2年)

 

捕手は関東第一の熊谷が高校ナンバーワンの箱山を上回る

まず右投手は今朝丸裕喜(報徳学園3年)、高尾響(広陵3年)などドラフト候補も多かったが、今大会の安定感ではナンバーワンだった関東第一の坂井を選んだ。

 初戦の北陸戦では6イニングのロングリリーフで無失点。その後の3回戦、準々決勝、準決勝でも全てリリーフで登板し、0点に抑え込んでみせた。選抜当時と比べてストレートの勢いが明らかにアップし、最速は151キロをマーク。勝負所でギアを上げられるのも持ち味だ。プロ志望という話も聞くが、支配下指名の可能性もあるだろう。

 左投手は馬庭優太(大社3年)、中村心大(早稲田実2年)らも見事な投球だったが、1人を選ぶならやはり東海大相模の藤田になる。準々決勝で関東第一に競り負けたものの、3試合、21回1/3を投げて自責点はわずかに2。初戦の富山商戦では7回で13奪三振、無失点と圧巻の投球を見せた。

 球場表示は最速147キロだったが、NPBスカウトのスピードガンでは149キロも計測。198センチの長身でも制球力が高く、高い位置から落差のあるカーブ、チェンジアップを駆使するピッチングは安定感十分だった。進路については明言を避けたが、プロ志望届を提出すれば1位指名の可能性もありそうだ。

 捕手では高校ナンバーワンの呼び声高い箱山遥人(健大高崎3年)も選抜に続いて見事なプレーを見せたが、大会を通じてのパフォーマンスでは関東第一の熊谷がトップと判断した。素早いスローイングと安定した捕球は高校生ではトップクラス。北陸、明徳義塾東海大相模という機動力のあるチームが盗塁0に終わったのも熊谷の存在が大きかったはずだ。また打撃でも、北陸戦では貴重な追加点をもたらすタイムリー、準決勝の神村学園戦では同点打を放つなど存在感を示した。

 

京都国際・藤本の遊撃守備は安心感があり、中軸としても十分な働き

  強打者の多い一塁手だが、今大会の成績を考えると関東第一の越後になるだろう。初戦から準々決勝まで3試合連続で複数安打を記録し、準決勝では7回にチーム初安打を放って逆転劇を呼び込んだ。さらに送りバントもしっかりと決めるなど、5番打者でありながらチャンスメーカーとしての仕事も果たした。守備はあまり目立たなかったが、打撃だけで十分に貢献は大きかったと言える。

 セカンドは好守備を見せる選手が多かったが、攻守両面で存在感を示したのが東海大相模の柴田だ。8番で出場した初戦の富山商戦では、大会第1号となるホームランをライトスタンドに叩き込むなど2安打の活躍。続く2試合では2番に打順を上げ、ツーベースと内野安打を放ちパンチ力とスピードを見せた。またセカンドの守備は球際が強く、正確なスローイングも光った。いかにも2番、セカンドが似合うタイプの選手のようでいて、長打力もあるというのは大きなプラス要素である。

 サードは岩下吏玖(神村学園3年)、髙橋徹平(関東第一3年)なども目立ったが、攻守ともに抜群のプレーを見せた早稲田実の高崎を選んだ。打点こそ1だったものの、3試合連続でマルチヒットを記録し、14打数7安打の活躍。186センチ・80キロと大型ながら、リストワークが巧みでセンター中心に鋭い打球を放つ。また西東京大会の前半はショートを任されていただけあって軽快なフットワークも光った。上背に見合うだけの筋肉量がついてくれば、将来はプロ入りも十分に狙えるだけの素材だ。

 石塚裕惺(花咲徳栄3年)、宇野真仁朗(早稲田実3年)、中村奈一輝(宮崎商3年)などドラフト候補が多く出場したショート。そのなかでも今大会で最も活躍した選手となると、京都国際の藤本だろう。上背はないものの、姿勢が良いので170センチという数字以上に大きく見える。守備では重心が上下動せずに素早く動くことができ、巧みなグラブ捌きも一級品。速い打球も落ち着いて処理し、見ていて安心感がある。打撃もボールを呼び込むのがうまく、体を鋭く回転させ、パンチ力も申し分ない。準決勝までの5試合全てでヒットを放ち、8安打中4本がツーベースで4打点と中軸として十分な働きを見せた。

 

東海大相模・中村の打撃技術は3年生を含めてもトップクラス

 外野手は正林輝大(神村学園3年)、徳丸快晴(大阪桐蔭3年)など注目の選手が苦しみ、3人全員が2年生という結果となった。

 なかでも抜群のパフォーマンスを見せたのが東海大相模の中村だ。初戦の富山商戦で2安打を放つと、続く広陵戦では4安打4打点の大活躍。敗れた準々決勝の関東第一戦ではノーヒットに終わったものの、それでも2つ四球を選んで出塁した。バットコントロールは素晴らしいものがあり、どのコースもしっかりミートすることができる。打撃技術に関しては3年生を含めてもトップクラスと言えるだろう。

 2人目は青森山田佐藤隆樹。初戦の長野日大戦でいきなり3安打を放つと、続く石橋戦でも2安打をマーク。終盤までもつれる展開となった滋賀学園戦でも両チーム無得点の7回に内野安打で出塁し、決勝のホームを踏んだ。少し非力な感は否めないが、ミート力があり、抜群の脚力で全力疾走を怠らない姿勢も素晴らしい。相手バッテリーにとっては嫌らしい存在であることは間違いない。

 3人目の京都国際・長谷川も佐藤と同じくミート力とスピードが持ち味。初戦の札幌日大戦では3安打を放ったが、レフト前ヒットの一塁到達タイムは4.2秒台を記録し、常に次の塁を狙おうとしているのがよく分かる。準々決勝からは打順が下位から5番に上がり、その智弁学園戦では貴重な追加点となるタイムリーを含む2安打1打点とチームの勝利に貢献。準決勝の青森山田戦では同点2点打を放った。守備も安定しており、外野手としての総合力が高い。

 今年のドラフトで指名されそうな選手は藤田と坂井くらいで、10人中5人が2年生となったが、全体的に守備や脚力が光る選手が多かった印象だ。それだけ新基準の金属バットの影響があったと思われ、来年は長打力で目立つ選手が出てくることを期待したい。

 

 

 

 


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高校野球あれこれ 第185号

「このチームで勝たれへんのかと…」甲子園、強打・大阪桐蔭“衝撃の完封負け”はなぜ起きた? 理想のフルスイングと現実との“ズレ”

目を逸らしてはいけない敗戦、と言えるかもしれない。

 2度の春夏連覇を達成し、今大会も6年ぶりの夏の覇権を狙った強豪・大阪桐蔭が2回戦で敗れた。同校が夏の選手権で完封されたのは初めてだという事実が、この敗戦の衝撃を物語っている。

「選手たちとゲーム中も話しましたけれども、試合が終わって整理がついている部分もありますし、ついてない部分もある。冷静に振り返って話したいと思います」

 大阪桐蔭西谷浩一監督が、努めて冷静さを保とうとしていたのが印象的だった。敗因を矢継ぎ早に質問されても表情を変えない指揮官の様子はいつも通りだったが、「しぶとく粘り強くをモットーにやってきましたけれども、最後の力及ばず、残念というか無念です」という言葉に悔しさが滲んでいた。

大阪桐蔭がここまで打てないとは

 これほど打てない大阪桐蔭を見たのは初めてかもしれない。大阪大会でも、準決勝の履正社戦こそ最高の試合運びを見せたが、5回戦、準々決勝、決勝戦と迫力に欠けた打線はこの夏の大阪桐蔭の象徴だった。

「記事読みましたよ。やっぱり、低反発の影響で追加点の長打が出ないです」

 大会1回戦の後、そう話したのは橋本翔太郎だ。西谷監督をグラウンドで支えるコーチである。橋本コーチが感想を述べてくれたのは、筆者が大阪大会後に書いた記事のことだ。大阪桐蔭の打線は活発だが、もう一本が出ないのはバットの影響もあると指摘した。

 投手の安全面を考慮して、この春のセンバツから導入された新基準の低反発バットは、全国の球児に新たな課題を突きつけている。今大会も19試合目までホームランが出なかったという事実が、このバットを扱う難しさを証明しているだろう。かつては5点差でもセーフティリードではないと言われた野球は消滅し、今大会はここまで、終盤で3点差以上の試合はひっくり返っていない。

 指導者たちが口を揃えるのは「フライを打つと失速する」という言葉だ。だから、低くて強い打球を打つ必要がある。

 下級生の頃からチームを引っ張って来た選手の一人、境亮陽はいう。

「低反発バットに対応するために必要だったのは、パワーをつけること。ロングヒットは出にくいので、低い打球を意識しながら、それが長打になるようにと心がけています」

 もっとも、大会に出場している指導者たちは低反発バットの影響を口にしたがらない。「みんな同じルールでやっていますから」。13日に敗れた智弁和歌山中谷仁監督も、西谷監督も、判を押したように同じ言葉を口にした。

 その同じルールの中でどんな野球を展開していくかが重要ということだが、監督のマネジメントとして、難しさがあるのも事実だろう。バットが変わっても野球を変えずに戦うのか、それとも、多少なりとも、低反発バットを意識したような野球をするのか。

フルスイングと、勝つための野球の狭間で

 12得点を挙げてコールド勝ちした大阪大会準決勝・履正社戦での大阪桐蔭は、確実に野球のスタイルを変えてきていた。それを貫く難しさ、もともと染みついた野球からどう離れていくか。本大会の2回戦は、そんな課題に直面した敗戦だった。

「やる限りは理想のバッティングを追いかけたい。でも、大会に勝っていく上ではどんな打撃をしていくかは難しい問題です」

 大阪大会のある日、西谷監督はそう話している。つまり本来は、これまでと同じようなフルスイングをしながら、バットに対応していける技術を鍛えていきたい、という願望はあるのだ。しかし、低反発バット導入直後の今、勝利との狭間でどういう野球をしていくか、というジレンマは避けられない。

 実際、この日の大阪桐蔭打線の打撃が全て悪かったわけではない。

 3回裏、二死二塁から右翼へ快音を放った4番・徳丸快晴のバッティングには目を見張った。

 だが、ライトを超えるようにも思えた痛烈な打球は、相手右翼手が一瞬ファンブルしたあと、グラブに収められた。あとひと伸びが足りなかったのだ。

 20年以上、甲子園の大会を全試合見てきた筆者の経験の中でも、完璧に捉えたように見えた一打だった。しかし、その打席について会心だったかと問うと、徳丸は意外な感想を語った。

「いい感じでは打っていたんですけど、そこまで感触は良くなかったんです。あれがヒットにならないというのは、自分の力のなさだなと思います。もっと練習して自分をレベルアップしていかないといけないと思った」

打球の見た目と、選手たちの感覚のズレ

 選手たちは微妙に感じとっている。自身の技術と、現実のわずかなズレをだ。

 7回裏に代打で打席に立ち、左中間への飛球を放ったラマルもいう。

「少し開いてしまって、先っぽで打ってしまった打球でした。あの打撃はいい当たりではないなと思いました。低反発バットでは、しっかり捉えないと飛ばないです」

 西谷監督は、敗因にフライアウトが多かったことを挙げているが、それは正確にいうと、「捉えた」フライアウトではなかったことに大きな要因があった。そこに選手たちは課題を感じたというわけである。

「この敗戦はショック」

「この敗戦はショックですね。このチームで勝たれへんのかと思います」

 橋本コーチはをそう本音を覗かせた。メンバーは揃っているはずだった。取り組みもしっかりしていたし、過去の優勝チームにあった“徹底する力”も感じていた。

「試合前の雰囲気も良かったし」

 おそらくチーム作りの問題ではないだろう。要因は他の何かにある。

 周知のように、平成以降の大阪桐蔭のプロ輩出率は高い。

 6度のホームラン王・中村剛也(西武)を筆頭に、打点・本塁打のタイトルをもつ浅村栄斗(楽天)、首位打者とMVPを獲得した森友哉(オリックス)、打点王などのタイトルがある中田翔(中日)など、各チームの4番クラスを育て上げてきた。中村の頃は甲子園に出ることも難しいような時代だったが、それでも、選手に高い打撃技術を身につけさせ、プロでも通用するほどの高いレベルにして送り出すことができていた。

卒業後に力を発揮できなくなっている?

 しかし、2度目の春夏連覇を果たした2018年以降、甲子園での活躍とは裏腹に、OBには以前のような勢いはない。黄金世代といわれた根尾昂(投手に転向)、藤原恭大らはプロに進んだものの、レギュラーを獲得できずにいる。大学に進んだ中川卓也、山田健太もドラフト指名漏れの憂き目に遭うなど、苦しい状態ではある。

 以前は通用したバッティング技術で、2018年以降の選手が壁にぶち当たっているのは何らかの課題があってのことだろう。そして今年、バットの規格変更があったなかで初の完封負け。これは何かを変える必要がある。

「時代が変わらないようにしたいと思います」

 取材時間終了のお知らせと同時に、橋本コーチがこの敗戦を重く受け止めるようにそう口にしたのは、危機感の裏返しだろう。

「力をつけて、ここぞの場面で打てるようなバッターになりたいと思います。将来的にはプロの世界で活躍できるような選手になりたい。こういう経験を生かしてやっていくしかないと思います」

 徳丸はそう語り、これからの野球でこの敗戦を生かしていくと誓った。

 現チームに突きつけられた課題。

 それは大阪桐蔭の打撃から、かつて身につけていたものが失われていたということ。そのことが低反発バットによって、暗に知らされたような気がする敗戦だった。

 

 

 

 

高校野球あれこれ 第184号

[高校野球]現役監督の甲子園勝利数ベスト3は西谷・馬淵・中井。4位は?

 
通算勝利数で現役10位のこの人はだれ?

「監督さんに40勝をプレゼントできました」

 この夏の甲子園広陵のエース・高尾響は、1失点完投で熊本工に競り勝ち、そういった。この勝利で広陵中井哲之監督は、甲子園通算40勝。元常総学院などの木内幸男大垣日大などを率い、先ごろ関商工の特別顧問に就任した阪口慶三に並び、歴代7位の勝利数となった。現役の監督では西谷浩一(大阪桐蔭)、馬淵史郎(明徳義塾)に続く第3位だ。

 高校野球の監督が、甲子園で何勝しているか。尾藤公(箕島・和歌山)の35勝を蔦文也(池田・徳島)が抜き、その蔦の記録をPL学園(大阪)の中村順司が塗り替えた。その58勝はアンタッチャブルと思われたが、長い間指揮を執る監督が増え、智弁和歌山などの高嶋仁が上回ったのは2010年のセンバツだ。さらに今年のセンバツでは、西谷がこれを凌駕した。歴代のランキングは、以下のようになる。[通算20勝以上。表は○数字が歴代順位、白抜き数字が現役の順位、勝敗(引き分けは除外。カッコ内は春・夏の内訳)、勝率、優勝回数(春夏の内訳)]。

①❶西谷浩一(大阪桐蔭)   70-15(33-8/37-7) .822(4/4)

②—高嶋 仁(智弁和歌山など)68-35(30-13/38-22).660(1/2)

③—中村順司(PL学園)    58-10(31-7/28-3)  .853(3/3)

④❷馬淵史郎(明徳義塾)   55-35(19-14/36-21).611(0/1)

⑤—渡辺元智(横  浜) 51-22(23-12/28-10).699(3/2)

 —前田三夫(帝  京) 51-23(21-13/30-10).689(1/2)

⑦❸中井哲之(広  陵) 40-22(24-12/16-10).645(2/0)

 —木内幸男(常総学院など) 40-19(13-6/27-13) .678(1/2)

 —阪口慶三(大垣日大など) 40-34(24-17/16-17).541(1/0)

⑩—小倉全由(日大三など) 37-20(14-9/23-11) .649(0/2)

 —蔦 文也(池  田) 37-11(21-5/16-6) .771(2/1)

 ここまでがベストテン。高校野球史に残る名監督が並ぶ。西谷監督は根尾昂(現中日)らが2年生だった2017年から22年の実質5年間(コロナ禍の20年を除く)で春3回、夏1回の優勝があり、その間に27勝と急ピッチで勝ち星を伸ばした。それからするとこのところはかなりペースダウンしたが、それでもここ2年で6勝と、コンスタントに勝ち星を増やしている。

準優勝では勝率が下がる西谷・門馬

 そもそも8割超という勝率がすごい。瞬間風速で、中村順司の最高勝率を上回った時期もあり、優勝までに必要な勝ち星を5とすれば、準優勝では勝率が下がってしまう計算だ。もう一度最強の世代が現れれば、100勝だって夢じゃない。ちなみに西谷監督の春33勝、高嶋の夏38勝は大会最多。続いて30位まで。

⑫—尾藤 公(箕  島) 35-10(22-5/13-5) .778(3/1)

⑬—深谷弘次(中京など) 33-11(16-5/17-6) .795(2/1)

⑭❹原田英彦(龍谷大平安) 31-18(19-10/12-8) .633(1/0)

 ❹門馬敬治(東海大相模など)31-8(21-5/10-3) .811(3/1)

 —北野尚文(福井商) 31-36(14-17/17-19).463

⑰—竹田利秋(仙台育英など) 30-27(12-13/18-14).526

⑱❻佐々木順一朗(仙台育英) 29-20(7-7/22-13) .604※現学法石川

 ❻斎藤智也(聖光学院) 29-25(5-6/24-19) .537

 —杉浦藤文(中  京) 29-11(10-6/19-5) .725(1/1)

㉑❽多賀章仁(近  江) 28-23(9-7/19-16) .549

 —森  士(浦和学院) 28-21(20-9/8-12) .571(1/0)

㉓❾仲井宗基(八戸学院光星) 27-15(9-7/18-8) .643

 —栽 弘義(沖縄水産など) 27-17(2-6/25-11) .614

㉕—三原新二郎(京都外大西など)26-14(11-6/15-8) .650

 —久保克之(鹿児島実) 26-18(12-6/14-12) .591(1/0)

 —枦山智博(樟  南) 26-23(4-7/22-16) .531

㉘❿小坂将商(智弁学園) 25-12(9-4/16-8) .676(1/0)

 —谷脇一夫(高知商) 25-13(9-4/16-9) .658(1/0)

 —上甲正典(済美など) 25-15(16-4/9-11) .625(2/0)

 ここにも過去の名将が多いが、門馬監督の勝率の高さ、また出場回数こそ少ないものの、優勝回数の多さが抜けている。21〜22年に12勝の多賀監督、また21〜24年に12勝の小坂監督が大きく順位を上げた。北野の36敗は最多記録。鹿児島で長くライバル関係だった久保、枦山が勝ち星で並ぶのも興味深い。さらに、31位以下。

近年の優勝監督も続々ランクイン

㉛—玉国光男(宇部商) 24-16(5-5/19-11) .600

㉜⓫永田裕治(日大三島など) 23-19(15-11/8-8) .548(1/0)

 ⓫吉田洸二(山梨学院など) 23-12(18-5/5-7) .657(2/0)

 —古屋文雄(横浜商) 23-8(10-3/13-5) .742

 —斉藤一之(銚子商) 23-10(6-5/17-5) .697(0/1)

㊱⓭岡田龍生(履正社) 22-11(13-8/9-3) .667(0/1)※現東洋大姫路

 —迫田穆成(如水館など) 22-13(7-4/15-9) .629(0/1)

 —山下智茂(星  稜) 22-25(6-11/16-14) .468

㊴⓮小針崇宏(作新学院) 21-14(4-4/17-10) .600(0/1)

 ⓮東 哲平(敦賀気比) 21-13(10-7/11-6) .618(1/0)

㊶⓰青栁博文(健大高崎) 20-9(13-5/7-4) .690(1/0)

 ⓰和泉 実(早稲田実) 20-7(5-3/15-4) .741(0/1)

 —橋本武徳(天  理) 20-9(13-5/7-4) .690(0/2)

 吉田、岡田、小針、東、青栁監督ら、10年代以降の優勝監督がランクを上げている。これ以外、おもな現役監督では中京大中京を率いて09年夏を制した大藤敏行(現享栄)、この夏に準優勝した関東一の米澤貴光両監督が19勝。花巻東の佐々木洋監督が18勝で続き、さらに22年夏に優勝し、翌夏も準優勝の仙台育英・須江航監督も同数と、こちらもハイペースだ。(文中敬称略)