甲子園初制覇の健大高崎は昨夏王者・慶應と対照的な「丸刈り」で気合い表現 “昭和の根性論にもほどがある!”の快挙
春のセンバツ甲子園決勝で報徳学園(兵庫)を破り、群馬県勢として初めてセンバツを制した健大高崎。昨夏の甲子園では、優勝した慶應義塾(神奈川)が髪型自由のエンジョイ・ベースボールで話題をさらったが、健大高崎ナインはそれとは対照的な「丸刈り」のチームだ。
健大高崎では、大会期間中にもバリカンで頭を刈り、ホテルに備え付けのカミソリでスキンヘッドにする部員も多かった。決勝を前に3年生部員たちは改めて、頭を五厘の長さに丸めたという。その理由を箱山遥人主将が話した。
「(昨秋の県大会のシードを決めるリーグ戦で)東農大二校さんにいきなり負けた日の夜、これはもう(センバツは)無理だと全員が諦めかけていた時に、ノリ半分で、『全員で五厘にして部長さんたちを見返そうぜ』となったんです。言ってみれば反骨心の表れでした。その日を境に、試合前日にはみんなが五厘刈りにして全員が一致団結し、関東大会、センバツと勝ち上がってこられた。今ではわざわざやろうと言わなくても、みんな五厘刈りにしています」
なかには、スキンヘッドにしている選手もいる。
「それは……おそらくですが、短さで気合いの入り具合を表現しているんだと思います(笑)」
全員五厘刈りもまたひとつの「多様性」
彼らは、五厘にすれば野球が上手くなるとか、試合に勝てるといった考えを持っているわけではない。主将の箱山が続ける。
「高校生で五厘刈りというのは、今の時代に反しているのかもしれません。だけど昭和の執念だったり、泥臭さであったり、そういう心を使って戦う野球で相手に負けたくないという根性論をもう一回大切にしようとやってきた。慶應(義塾)高校が去年、髪が長くても優勝できるということを証明した。自分達の全員五厘刈りは、古いというか、昭和というか、昔の考え方だと世間の人は言うと思うんですけど、多様性が重視されているなかで、どんな髪の毛でも優勝できるんだということを逆に証明できたと思います」
左の佐藤龍月、右の石垣元気というふたりの2年生投手を擁し、地元の大応援団に背中を押された報徳学園を3対2で下した。前身の群馬女子短大付から共学化した2001年に同好会として発足し、青柳博文監督(51)は部活動に昇格した2002年に監督となったが、当時は髪の毛を伸ばしていた選手に「坊主にしたほうがいいんじゃないか」と提案したところ、15人のうち3人が辞め、練習をボイコットされた経験もある。
それから22年が経過し、青柳監督は箱山らの取り組みをどう見ているのだろうか。
「僕からしたら髪の毛は短くなくていいと思うんだけども、この子たちが泥臭くやると決めて、ひとつの方向を向いていくという意味では価値がある(行動だ)と思います」
記録員の川名健太郎は前日の準決勝後、全員が五厘以下の短さに揃えることについて「これが正しいかどうかは、日本一にならないとわからないこと」と話していた。
「やってきたことはやっぱ間違ってなかったと思います」(川名)
髪型を自由にして自主性を重んじたエンジョイ・ベースボールが天下を獲ったそのおよそ8カ月後、「昭和の野球」を志した令和の球児が、青光りした頭で日本一となった。どちらの取り組みが正しいかではなく、髪型で野球の勝負が決まるわけではない――その主張を慶應とは真逆の形で貫いた結果の、快挙だった。
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