センバツで評価を上げた投手10選 ドラ1候補に躍り出た報徳学園・今朝丸が筆頭格
健大高崎の初優勝で幕を閉じた第96回選抜高校野球。今大会はドラフト候補という観点で見ても、投手、野手ともに楽しみな選手が多く、大いに盛り上がった。そこで、今回のセンバツで評価を上げた選手を下級生も含めて、投手、野手それぞれに10人ピックアップしたい。まずは投手編だ。
今朝丸裕喜(報徳学園/3年)
今大会、最も強いインパクトを残した投手が今朝丸だ。惜しくも優勝は逃したものの、先発した3試合は愛工大名電、大阪桐蔭、健大高崎の強力打線を相手に見事な投球を見せた。
187センチの長身で、大会前の練習試合では最速151キロをマークし、それだけのスピードがありながら制球力も高い。この1年での成長は著しいものがあるが、これからまだまだ伸びそうな雰囲気があり、将来性の高さも大きな魅力だ。今大会での活躍で、ドラフトの有力候補から1位候補へとランクアップしたことは確かだろう。
吉岡暖(阿南光/3年)
大会前は四国で屈指の右腕という評価だったが、今大会での投球でその実力が全国でもトップクラスであることを証明した。今年から解禁となった二段モーションを取り入れたことで、フォームの安定感が増した。
ストレートは140キロ台前半でもボールの角度があり、数字以上の勢いを感じる。ストレートと変わらないフォームからスライダー、カットボール、フォークを操り、26回で30個の三振を奪ったのは見事というほかない。現時点でも支配下でのドラフト指名は十分狙えるが、夏までにスピードが上がればさらに評価は高くなりそうだ。
平嶋桂知(大阪桐蔭/3年)
報徳学園との準々決勝では立ち上がりに制球難を露呈して今朝丸裕喜に投げ負けたが、それでも昨年秋からの成長はしっかりと見せた。特に初戦の北海戦は素晴らしい出来で、7回を投げて四死球0、7奪三振で1失点(自責点0)と好投。ストレートはコンスタントに145キロを超え、140キロ近いスピードで変化するフォーク、カットボールも威力は十分だった。
上半身が強く、数字ほどストレートが速く見えないのは課題だが、スケールの大きさは魅力だ。突如として制球を乱す悪癖が解消されれば、ドラフト上位指名もあり得る素材である。
高尾響(広陵/3年)
甲子園は3季連続。頂点には届かなかったが、さすがという投球を見せた。昨年と比べて左足をよりゆっくり大きく上げて軸足にタメを作れるようになり、体重移動のスピードが速くなったようにも映った。
勝負所でギアを上げることができ、試合終盤でも145キロを超えるストレートの勢いは申し分ない。フィールディングやクイックなど投げる以外のプレーのレベルの高さも相変わらず。広陵の選手は大学や社会人に進むケースが多いが、もしプロ志望であればある程度高い順位での指名も狙えるだろう。
洗平比呂(八戸学院光星/3年)
左投手でプロの評価が最も高いと思われるのが洗平だ。長いリーチを柔らかく使える腕の振りは一級品で、球持ちも長く、打者は差し込まれることが多い。ブレーキのあるカーブ、チェンジアップで緩急をつけ、スライダーの変化も鋭く、あらゆるボールで勝負できる。まだ少しフォームに無駄な動きはあるが、リリースの感覚が良く、敗れた星稜戦でも8回を投げて108球で収めたように、制球力も決して低くない。
今年の高校生サウスポーでは間違いなくトップクラスであり、プロ志望なら支配下指名は有力だろう。
関浩一郎(青森山田/3年)
昨年秋までは素材は良いものの少し時間がかかりそうな印象だったが、この冬の間に力強さが増し、完全にドラフト候補という立ち位置に浮上したと言える。
187センチの長身でありながら体の使い方が上手く、フォームに悪い癖がないのが大きな長所。1回戦では先発として試合を作り、リリーフで登板した2回戦ではギアを上げて以前より出力がアップしたこともしっかりアピールした。プロが高校生に求めるスケール感と将来性を高いレベルで兼ね備えており、夏までに150キロを超えてくればドラフト上位指名の可能性もありそうだ。
伊東尚輝(愛工大名電/3年)
入学当初から大器と評判だった大型右腕。昨年は伸び悩んでいるように見えたが、今大会で改めてポテンシャルの高さを示し、再びドラフト戦線へと浮上してきた印象を受ける。
少し重心が上下動するのは気になるが、テイクバックをやや小さくしたことでリリースが安定し、140キロ台中盤のストレートがコーナーに決まるようになった。スライダーもストレートと変わらない軌道から変化し、空振りが奪えるボールだ。ここからさらに出力を上げて、スライダー以外の変化球がレベルアップすれば、高校からのプロ入りも見えてくるだろう。
佐藤龍月(健大高崎/2年)
5試合、22回を投げて失点0、22奪三振という見事な投球でチームを初優勝に導いた。
173センチと投手としては小柄で、右足をかなりクロスに踏み出すフォームは気になるが、鋭く変化するスライダーとチェンジアップのコンビネーションは高校生離れしたものがある。走者を背負っても慌てることなく、落ち着いて相手を見ながら投げられるというのも大きな長所だ。秋に比べると少しストレートの勢いがなく、技巧色が強くなった印象で、来年のプロ入りを見据えると出力をどれだけ上げられるかが重要なポイントとなりそうだ。
石垣元気(健大高崎/2年)
佐藤龍月との二枚看板で、準決勝、決勝は先発でも好投。球場表示では大会最速となる150キロもマークし、一躍来年の目玉候補へと浮上した印象を受ける。
姿勢が良く、177センチというプロフィールよりも大きく見え、豪快な腕の振りが大きな特長。昨年秋はただ速いだけという感が強かったが、この春はスライダーなど変化球もしっかりレベルアップして投球の幅が広がった。まだ全体的に粗削りながら、2年春ということを考えると十分な完成度もあり、今後の成長が楽しみな本格派右腕である。
森陽樹(大阪桐蔭/2年)
2回戦で先発を任され、4回1失点で降板。結果としては可もなく不可もなくという甲子園デビューとなったが、それでも高いポテンシャルの片鱗は見せた。
先輩の平嶋桂知と比べて全身を使ってゆったりと腕を振ることができており、指にかかった時のボールの勢いは目を見張るものがある。変化球も鋭く落ちるフォークはブレーキ抜群で、決め球として使える威力があった。まだ長身を持て余している印象だけに、ここからスケール感を残したまま、どうやって完成度を高めていくか。引き続き注目したい。
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