「1強」大阪桐蔭を止めるために来春センバツ出場校がやるべきこと
秋の日本一を目指す明治神宮大会は、大阪桐蔭(近畿=大阪)が5点差を逆転して広陵(中国=広島)を下し、大会史上初の2年連続優勝。来春のセンバツでも優勝候補筆頭として連覇を狙う。
何試合か神宮球場で観戦したが、相変わらず選手の層が厚い。投手陣は左腕エースの前田悠伍(2年)を筆頭に、今年も好投手を揃えている。ただ、前田の直球は140キロ前後。東邦(東海=愛知)戦では本塁打を打たれた。ツーシームやスプリットといった変化球は多彩でキレがあるだけに頼ってしまい、直球がおろそかになる傾向がある。
神宮はマウンドの傾斜が低く、土が硬いため、球が浮きやすいことを差し引いても、高めの割合が多かった。決勝の広陵戦ではボール2個分は高いボール球をストライクに取ってもらえたから良かったものの、通常のストライクゾーンなら、負けていたかもしれない。センバツまでに直球の質を上げないと、打線がいいところにはつかまる可能性がある。とはいえ、今大会で登板した南恒誠(2年)、藤井勇真(2年)、松井弘樹(2年)、南陽人(1年)の投手陣は、いずれも140キロ近い球威のある球を投げていた。西谷浩一監督が前田の起用に固執しないで済むのが強さである。
打線は2番の山田太成(2年)、3番の徳丸快晴(1年)を中心に切れ目がないが、“らしくない”送球ミスや守備力の甘さが気になった。
■総合力高い夏王者
対抗は今夏の甲子園大会を制した仙台育英(東北=宮城)だ。登板した高橋煌稀(2年)、湯田統真(2年)、仁田陽翔(2年)、田中優飛(2年)の投手陣は大阪桐蔭と双璧。打線は右打者は右中間、左打者は左中間と逆方向に強い打球をはじき返していて確実性が高かった。準決勝の大阪桐蔭戦は4-5と接戦で、こちらも総合力は高い。
広陵は主砲の真鍋慧(2年)が今大会2本塁打。バックスイングの際にバットのヘッドが投手側に入るクセがあるため、速球に詰まる傾向はあるものの、大阪桐蔭戦で打ったのは評価できる。主戦投手の倉重聡(2年)の直球は130キロ台半ばながら、冬の間に140キロ前後まで伸ばせれば面白い。今夏はエースだった高尾響(1年)も足の故障が治り、好投した。沖縄尚学(九州=沖縄)の東恩納蒼(2年)のフォームは理想的で球が伸びていた。
「甲子園で優勝を狙うには好投手が2人以上必要」というのは最近の常識だ。今夏の甲子園準々決勝で大阪桐蔭が敗退した試合も、下関国際が左右2投手の継投で目先を変えたことが奏功した。
「大阪桐蔭1強時代」をどこが止めるのか。センバツ出場校は冬の間にタイプの違う投手を2人以上つくるべきである。