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高校野球あれこれ 第115号

今を輝くプロ野球選手たちの高校時代【広島編】 

甲子園決勝で“謝罪”した「4番・エース」と逆転満塁弾を浴びた右腕

堂林は中京大中京の「4番・エース」として2009年夏の甲子園を制した 

 第105回目を数える夏の甲子園大会へ向けて、高校球児たちがすでに熱い戦いを繰り広げている。今回は彼らの「先輩」であるプロ選手たちの高校時代にスポットライトを当てる。
 セ・パ12球団別に選手3名ずつをピックアップし、甲子園での活躍を振り返りたい。今回は広島編だ。今をときめくスター選手の高校時代を振り返るとともに、ぜひ先輩たちの後を追いかける高校球児の活躍もチェックしてほしい。

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堂林翔太中京大中京(愛知)

 「エース兼4番」として、投げては140キロ台のストレートと多彩な変化球をコーナーに投げ分け、打っては抜群のバットコントロールでヒットを量産した。

 高校1年夏から公式戦に登板した。その後しばらくは名門校の層の厚さや自身の故障などに苦しんだが、2年秋の東海大会では全4試合で完投勝利を挙げて優勝に貢献した。そして迎えた2009年、春のセンバツ大会に「4番・投手」として出場すると、1回戦で神村学園(鹿児島)、2回戦で倉敷工(岡山)に勝利して16強入り。だが、準々決勝で報徳学園(兵庫)を相手に土壇場の9回に2点を奪われて5対6の逆転負けを喫した。

 春の3試合を投げてはすべて完投、打っては打率.584をマークした堂林は、夏も甲子園に戻ってきた。再び「4番・投手」を務め、1学年下の磯村嘉孝(現広島)とバッテリーを組んだ。1回戦で酒居知史(現楽天)を擁した龍谷大平安(京都)を5対1で下すと、関西学院(兵庫)、長野日大(長野)、都城商(宮崎)を撃破して4強入り。そして準決勝では春の準優勝左腕・菊池雄星(現ブルージェイズ)と対戦。菊池が背筋痛でベンチスタートとなった中、初回の第1打席で先制タイムリーを放つと、投げては8回を6安打1失点に抑えて11対1の大勝を収めた。

 迎えた決勝戦では、日本文理(新潟)を下して深紅の優勝旗を手にすることになった。だがこの試合、4番としては本塁打を含む3安打を放ったが、リリーフで登板して投手としては10対4で迎えた9回表2死走者なしから、相手の連打を許して「日本文理の夏はまだ終わらない!」の実況とともに1点差にまで追い上げられる事態を招いた。そして試合後、「最後、苦しくて…」と涙を流しながら顔を伏せ、優勝インタビューとしては異例の「情けなくてすみませんでした」と謝った姿は印象的だった。

 夏の甲子園で打率.522の高打率をマークした堂林は、プロでは野手一本で勝負している。そして後輩たち、今夏の中京大中京はノーシードからの登場となっている。東邦、愛工大名電、享栄など群雄割拠の愛知を制する高校は果たしてどこになるのだろうか。

野村祐輔広陵(広島)

 今夏に完全復活の気配を漂わせている元新人王&最多勝右腕も、夏の甲子園の決勝舞台に立った。

 広陵高校で1年春からベンチ入りし、エースとなった2年秋に広島県大会、さらに中国大会優勝を飾る。そして3年生となった2007年春のセンバツ大会で8強入り。1回戦での成田(千葉)戦で唐川侑己(現ロッテ)との息の詰まる投手戦の末に延長12回を1失点に抑えると、続く北陽(大阪)戦では守備位置を一塁に変えながら先発、中継ぎ、抑えと3度に渡ってマウンドに上がり、計8回1/3を投げて3安打無失点ピッチングを披露した。だが、準々決勝では帝京(東東京)相手に痛打を浴びて8回7失点で大会を去った。

 2007年夏、再び聖地のマウンドにたどり着いた野村は、初戦で3年連続決勝進出中だった駒大苫小牧南北海道)を下した後、東福岡(福岡)、聖光学院(福島)打線を寄せ付けず。準々決勝では熊代聖人(元西武)を擁した今治西(愛媛)、準決勝ではエース・田中健二朗(現DeNA)を擁して春夏連覇を目指していた常葉菊川(静岡)に勝利して決勝進出を果たした。

 優勝旗は目前だった。だが、佐賀北(佐賀)を相手にした決勝戦では7回まで被安打1の快投を演じながら、8回裏に“がばい旋風”に飲み込まれる形で逆転満塁本塁打を被弾した。それでも小林誠司(現巨人)とのバッテリーで、甲子園春夏通算9試合74回1/3イニングを投げて16四死球と抜群の制球力で防御率2.54の好成績を残した右腕のピッチングは、多くのファンの脳裏に焼き付いている。

 野村は明治大を経て広島入り。広陵は野村以外にも多くの選手をプロ舞台に送り込んでおり、今年のチームにはドラフト上位候補の左のスラッガー・真鍋慧(3年)がいる。甲子園でも上位進出が期待されている。

坂倉将吾:日大三(東京)

 甲子園の決勝舞台に立った2人の投手に対して、25歳にして打線のキーマンにして今季から正捕手としての役割も担っている男は、高校時代に目標であった甲子園出場を果たすことはできなかった。

 注目はされていた。名門・日大三で1年秋から「4番・ライト」で出場し、2年春の都大会では打率.419、2本塁打の活躍で優勝を飾り、関東大会でも満塁弾を放つなど、鋭いスイングと高い身体能力、勝負強さは群を抜いていた。2年夏も3年生の強打者が並ぶ中で唯一、2年生として4番に座って快音連発も、都準決勝で1年生の清宮幸太郎(現日本ハム)を擁した早稲田実に敗れた。

 迎えた最終学年は、本職である捕手に座ってチームの大黒柱となった。高校生活最後となった2016年の夏、1学年下のエース左腕・櫻井周斗(現DeNA)をリードしながらバットでも相変わらずの快音連発で勝ち進んだが、準決勝で東海大菅生に2対4の惜敗を喫し、涙を飲むことになった。

 それでも3年間、日大三の厳しい練習の中で身に着けた実力は本物だった。甲子園未出場ながらU-18侍ジャパンにも選ばれて世代トップクラスの能力を証明すると、2016年秋のドラフト会議で広島から4位指名を受けてプロ入りし、確かな結果を残しながら順調に成長している。

 日大三は今年3月に、38年間に渡って多くの選手を育て挙げた中で2度の全国制覇に導いた名将・小倉全由監督が退任した。三木有造新監督の下で迎える初めての夏、初戦で強豪・国士館を16対2で一蹴して好スタートを切った。昨夏に続いての甲子園出場なるか。今後の戦いが注目される。
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