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高校野球あれこれ 第110号

今を輝くプロ野球選手たちの高校時代【ソフトバンク編】 小さな巨人センバツ優勝右腕、無念の暴投で夏を終えた男

球界を代表する遊撃手・今宮は高校時代から抜きんでた能力を見せつけていた 

 第105回目を数える夏の甲子園大会へ向けて、高校球児たちがすでに熱い戦いを繰り広げている。今回は彼らの「先輩」であるプロ選手たちの高校時代にスポットライトを当てる。
 セ・パ12球団別に選手3名ずつをピックアップし、甲子園での活躍を振り返りたい。今回はソフトバンク編だ。今をときめくスター選手の高校時代を振り返るとともに、ぜひ先輩たちの後を追いかける高校球児の活躍もチェックしてほしい。

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今宮健太:明豊(大分)

 抜群の身体能力で長くソフトバンクの正遊撃手として活躍している男は、高校時代に投手として自己最速154キロ、打者として高校通算62本塁打と投打に並外れた能力を見せつけて「小さな巨人」と言われた。

 明豊(大分)入学後すぐにショートの定位置を奪うと、同時に投手も兼任。1年秋には「1番・投手」として県大会優勝から九州大会制覇、同校初のセンバツ出場に貢献した。甲子園初出場となった2008年春は、初戦で常葉菊川(静岡)と対戦して4対6で敗退。自身も1番打者として4打数1安打、先発投手として9回を10安打6失点(自責4)と投打ともに力を発揮し切れなかったが、そこから投打ともに大きくスケールアップを果たすことになった。

 ライバルは菊池雄星(現ブルージェイズ)だった。2年連続で出場した2009年春の甲子園の2回戦で花巻東(岩手)と対戦するも、“手も足も出ず”に0対4の完封負けを喫した。ここから「打倒・花巻東」「打倒・菊池」を誓った今宮は、同年夏に再び甲子園の土を踏み、準々決勝で再戦が実現する。ともに先発しながら途中降板(今宮は4回途中、菊池は5回途中)して乱打戦となったが、9回に再びマウンドに上がった今宮が、菊池に並ぶ同大会最速タイの154キロを計測してスタンドを沸かせる。結果的に延長10回、6対7で敗れたが、強烈なインパクトをファンの脳裏に焼き付けた。

 プロ入り後、野手に専念した今宮は高卒2年目から正遊撃手の座をつかみ取り、広い守備範囲と強肩でゴールデン・グラブ賞を5回受賞し、昨季までのプロ通算12年で1354試合に出場して通算打率.251、83本塁打の成績を残している。その中で、菊池とは1軍舞台で7シーズンに渡って対戦して通算40打数12安打(3本塁打)の打率.300をマーク。特に菊池のメジャー移籍前の3年間は3年連続で1本塁打ずつを放ち、高校時代の“リベンジ”を果たすことに成功したと言える。

 明豊は今宮が卒業した後も甲子園の土を何度も踏み、2021年春のセンバツ大会では、京本眞(現巨人)を擁して同校最高位の準優勝を収めた。今夏も第1シードとなっており、3年連続の夏切符への期待を背負っている。

東浜巨沖縄尚学(沖縄)

 先発ローテーションとして昨季までにプロ通算63勝を挙げている右腕の高校時代も触れなくてはならない。

 苦楽が入り混じった波乱万丈の3年間だった。1年秋から主戦投手としてマウンドに上がるも、部内不祥事による1カ月の対外試合禁止を強いられた。それを乗り越えて迎えた2年夏は、県大会準決勝まで勝ち上がるも7回に熱中症による両足けいれんで降板し、チームも敗退した。その悔しさを2年秋の大会にぶつけてセンバツ切符を手に入れ、翌春に聖地のマウンドを踏んだ。

 甲子園では見事すぎる投球を披露した。1学年下の嶺井博希(現ソフトバンク)とバッテリーを組み、聖光学院(福島)との1回戦で自己最速147キロを計測しながら9回を7安打無失点に抑え込むと、続く2回戦は明徳義塾(高知)を相手に9回7安打1失点の完投勝利。天理(奈良)との準々決勝ではリリーフ登板で5回を4安打無失点に抑えると、翌日の準決勝では東洋大姫路(兵庫)を相手に9回8安打2失点での完投勝利を飾った。

 そして3日連続の登板となった聖望学園(埼玉)との決勝戦でも、相手に付け入る隙を与えずに9回6安打での完封劇。天理戦で左ひざに打球を受け、翌日以降は痛み止めを飲んでのマウンドだったというが、同大会5試合で計41イニングを投げて防御率0.66とマークし、沖縄尚学を2度目の春の甲子園優勝に導いた。

 主役として歓喜を味わった東浜だったが、高校最後の夏は涙を飲んでいる。春夏連覇の期待を背負って県大会を順調に勝ち進むも、沖縄尚学、そして自身の人気沸騰による“フィーバー”が決勝当日に予想以上の渋滞を巻き起こし、巻き込まれた選手バスの球場入りが大幅に遅れる事態となったのだ。シートノック開始5分前にようやく準備を整えたが、気持ちの整理もできないまま試合開始を迎えた東浜は、初回に5失点。2回以降は立ち直ったが、2対5で浦添商に敗れる結果となった。

 東浜は高校時にはプロ志望届を提出せずに亜細亜大に進学し、「大学No.1投手」としてドラフト1位指名を受けてプロ入り。今年で11年目を迎えている。果たして東浜に続くようなスター選手が沖縄から再び生まれるのか。

 沖縄大会は7月15日に準決勝2試合が行われる予定。東浜の母校・沖縄尚学をはじめ、宮古ウェルネス沖縄、興南の4校の争いとなっている。

有原航平:広陵(広島)

 今季3年ぶりに日本球界復帰を果たして“復活”を遂げた右腕も、無念の形で高校野球生活の幕を閉じている。

 地元の名門・広陵の門を叩き、2年春にベンチ入りし、夏は主戦投手として県大会決勝まで勝ち上がった。主将兼リードオフマンの福田周平(現オリックス)とともに秋の中国大会でベスト4入りを果たして3年春、2010年のセンバツ大会の切符を獲得した。

 聖地でも有原は堂々のマウンドさばきを見せた。初戦の立命館宇治(京都)戦で13奪三振をマークすると、続く宮崎工(宮崎)相手には9回を2安打完封で10奪三振。準々決勝でも中京大中京(愛知)を相手に8回1/3を4安打無失点で7奪三振と好投し、能力の高さを存分に見せ付けた。だが、山﨑福也(現オリックス)との投げ合いで始まった準決勝の日大三西東京)戦では、7回を終えて5対4とリードするも、雨の中で迎えた8回裏に自らの悪送球から連打を浴びて逆転負け。12失点(自責8)でマウンドを後にする悔しさも味わった。

 最後の夏も“無念”だった。県大会は順調に勝ち抜いたが、甲子園ではいきなり歳内宏明(元阪神)を擁する聖光学院(福島)と対戦。6回まで歳内が4安打無失点に抑えると、有原はそれを上回る2安打無失点ピッチングを披露した。だが、7回裏に連打で1死1、3塁のピンチを背負うと、2死2、3塁とした後、フルカウントからの6球目が低めへの暴投となって打者が振り逃げ。三塁走者が生還し、0対1で敗れて早々に大会を去ることになった。

 有原はその後、早稲田大へ進学して東京六大学の舞台で自らの能力を改めて証明。ドラフト1位で日本ハムに入団して新人王、5年目には最多勝を獲得した。有原の卒業後も広陵は甲子園の常連として出場を続け、2017年夏は準優勝。今年の広陵は春のセンバツ大会でベスト4入り。小林隼翔主将(3年)を中心に、夏の甲子園初優勝を狙っている。