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高校野球あれこれ 第119号

今を輝くプロ野球選手たちの高校時代【MLB編】 

甲子園で邂逅し、アメリカで再会した2人と、数々のドラマを生んだ稀代の右腕

大谷(現エンゼルス)は2年夏、3年春の2度、甲子園出場を果たした 

 第105回目を数える夏の甲子園大会へ向けて、高校球児たちがすでに熱い戦いを繰り広げている。今回は彼らの「先輩」であるプロ選手たちの高校時代にスポットライトを当てる。

 セ・パ12球団別に選手3名ずつをピックアップし、甲子園での活躍を振り返りたい。最終回となる今回はMLB編だ。今をときめくスター選手の高校時代を振り返るとともに、ぜひ先輩たちの後を追いかける高校球児の活躍もチェックしてほしい。

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大谷翔平花巻東(岩手)

 今さら語る必要のない“世界最高”の男にも、初々しさあふれる高校時代があった。

 中学3年時にセンバツ甲子園で準優勝した菊池雄星への憧れを持って花巻東へ入学した。1年夏までは野手専念で1年秋に投手解禁。東北大会で147キロを計測して注目を集め、2年春には最速151キロで“ダルビッシュ2世”と呼ばれた。そして2年夏、成長期による骨端線損傷を抱えた中で「3番・ライト」として岩手県大会を勝ち上がり、2011年夏の甲子園出場を果たした。

 だが、初めての甲子園は短かった。初戦で伊藤拓郎(元DeNA)、松本剛(現日本ハム)、石川亮(現オリックス)を擁した帝京(東東京)と対戦し、序盤から点の取り合いとなった末に7対8の惜敗。大谷は打者として5打席に立って2四死球の3打数1安打、投手としては4回途中からマウンドに上がって150キロを計測したが、調整不足が明らかで、5回2/3イニングを6安打5四死球3失点で負け投手となった。
 
 2度目の甲子園は3年春、2012年のセンバツ大会だった。だが、この時も故障を抱えて投手としては手負いの状態。その中で、藤浪晋太郎(現オリオールズ)、森友哉(現オリックス)のバッテリーを擁してこの年の甲子園春夏連覇を果たす大阪桐蔭(大阪)と初戦で対峙する。すると、打者として2回の第1打席、藤浪のカウント2-2からのスライダーをすくい上げ、長い滞空時間でのライト越えの先制弾を放つ。さらに投手としても5回まで2安打無失点の好投を見せる。しかし、6回に逆転を許すと最終的に8回2/3を7安打11四死球9失点(自責5)と乱れて2対9で敗れ、再び初戦で姿を消すことになった。

 迎えた最後の夏、大谷は岩手県大会でアマチュア球界史上初となる160キロを計測して大きな話題を集めたが、県大会決勝で盛岡大付に敗れて甲子園出場ならず。不完全燃焼の高校時代ではあったが、その分、大きな余白を残した状態でプロの扉を開けることになった。

 そして、今年は高校通算本塁打記録を塗り替えた大型スラッガー・佐々木麟太郎(3年)が最後の夏を迎えている。大先輩の大谷でも果たせなかった「岩手から日本一」の夢に向け、21日に岩手県大会の準々決勝を戦う。

藤浪晋太郎大阪桐蔭(大阪)

 その大谷と同学年のライバルだった男は、高校時代に圧巻のピッチングで甲子園春夏連覇を成し遂げた。

 中学校卒業時に身長194センチに達していたという大型右腕は、浅村栄斗(現楽天)らを擁して全国制覇(2008年夏)を果たした2年後に大阪桐蔭に入学した。当初から期待は特大。1年春からベンチ入りし、1年秋から先発投手として結果を残し、2年夏に150キロを計測した。だが、2年夏に府大会決勝で敗れるなど、3年春まで甲子園の土を踏むことはできなかった。

 2012年、満を持した甲子園の舞台で藤浪は躍動を続けた。2年春の初戦で花巻東(岩手)と対戦し、大谷翔平(現エンゼルス)に被弾するも9回を8安打12奪三振2失点で勝ち上がると、続く九州学院(熊本)戦では大塚尚仁(元楽天)と投げ合い、9回6安打8奪三振1失点。浦和学院(埼玉)戦は6回からリリーフ登板して4回を6安打6奪三振無失点で大会最速の153キロを計測すると、準決勝は健大高崎(群馬)を9回7安打9奪三振1失点。そして決勝では、田村龍弘(現ロッテ)、北條史也(現阪神)を擁した光星学院(青森)を相手に9回12安打6奪三振3失点の力投で、7対3の勝利を収めて頂点に立った。

 夏は、さらに輝いた。初戦の木更津総合(千葉)戦から153キロを計測して9回6安打14奪三振1失点で滑り出すと、準々決勝の天理(奈良)戦でも9回4安打13奪三振1失点と相手を寄せ付けず。そして準決勝の明徳義塾(高知)戦で9回2安打8奪三振無失点、春の再戦となった決勝では光星学院(青森)を9回2安打14奪三振無失点と、2日連続の2安打完封劇で史上7校目の春夏連覇に導いた。春夏計76イニングを投げて、90奪三振、20四死球防御率1.07という甲子園通算成績は「怪物」と呼ぶに相応しいものだった。

 藤浪以前、そして以降も、甲子園には幾人もの「怪物」が登場してきた。そして今夏も、母校・大阪桐蔭のエース・前田悠伍(3年)を含めて“候補者”が多くいる。果たして、彼らは甲子園の舞台で輝けるのか。まずは万全のコンディションで夏を過ごしてもらいたい。

ダルビッシュ有:東北(宮城)

 今年6月、野茂英雄に続くメジャー通算100勝を達成した稀代の右腕は、2年生時から甲子園4季連続出場を果たし、多くの“ドラマ”を演じ、経験した。

 甲子園初登場は1年秋の東北大会を制した後の2003年春だった。当時、成長痛や右わき腹痛を抱えた状態で万全ではなかったというが、スラリとした長身から切れ味鋭いボールを投げ込み姿は”大器”を予感させ、初戦の浜名(静岡)戦で9回4安打無四球1失点完投に抑え込んだ。だが、続く花咲徳栄(埼玉)戦では乱調で6回12安打9失点。早々に姿を消すことになった。

 その経験を経て迎えた夏、ダルビッシュは頂点に近づく。初戦の筑陽学園(福岡)で腰痛によって2回緊急降板のアクシデントも、続く近江(滋賀)戦では9回を投げ抜き、10安打を許しながらも要所を抑えての1失点。そして3回戦の平安(京都)戦では延長11回を2安打15奪三振無失点の快投劇を披露した。その後、準々決勝で光星学院(青森)では3回1/3イニング、準決勝で江の川(島根)では未登板の中でチームが勝ち上がると、決勝では常総学院(茨城)を相手に先発して9回を12安打4失点の力投。しかし、スコアは2-4と2点届かず、あと一歩で優勝を逃すことになった。

 そして3年春だ。1回戦で熊本工(熊本)と対戦すると、ダルビッシュはゆったりとしたフォームから伸びのあるストレートと変幻自在の変化球で相手打線を手玉に取り、大会史上12度目となるノーヒット・ノーランを達成した。さらに続く2回戦では大阪桐蔭(大阪)との優勝候補同士の対決に3対2で勝利する。だが、準々決勝の済美(愛媛)戦は右肩痛で先発を回避。それでも眼鏡のサイド右腕・真壁賢守の力投で9回2死まで6対4とリードしていたが、「あと1球」からレフトを守っていたダルビッシュの頭上を越えるサヨナラ3ランが飛び出すことになった。

 最後の夏は、1回戦で北大津(滋賀)を9回8安打10奪三振、2回戦で遊学館(石川)を3安打12奪三振で2試合連続完封という万全のピッチングを披露して「今度こそ」との期待が高まった。だが、3回戦の千葉経大付(千葉)戦で再び“ドラマ”が襲う。雨の中、1対0とリードして9回を迎えるも、2死3塁からのサードゴロがタイムリーエラーとなって延長戦に突入。延長10回に勝ち越し点を許して敗れることになった。

 特別な才能を持った選手、強さを誇るチームであっても、勝ち続けるのは至難の業だ。それは今夏、宮城県大会準々決勝で東北を下したライバル・仙台育英にとっても同じことが言える。ダルビッシュが果たせなかった「白河の関越え」を2年連続で果たすことができるのか。今夏の“ドラマ”の行く末に注目したい。