ぼくらのサイトⅢ

スポーツ、特に高校野球の記事を中心にして、監督、伝説の試合、結果考察などを記しています。 記事に関連した書籍やコーヒー機能付きウォーターサーバー、  生ビールサーバーを紹介しています。

高校野球あれこれ 第131号

2023プロ野球ドラフト会議特有の例年と変わった点について考察する

 

2023年のドラフト会議は例年といくつか相違点があったので、背景と個人的な考え含めて、考察していきたいと思う。

 

独立リーグからの支配下指名が過去最多、2位指名2人という例年にない独立リーグ指名ラッシュはなぜ起きたのか

 

2023年ドラフトにおいて、独立リーグからの指名は全体で23人(支配下6名、育成17名)と過去最高である。(2015年の12人指名が今までで一番多かったので、倍近く増加したことになる。)

 

さらに、ドラフト2位で大谷輝龍(ロッテ)、椎葉剛(阪神)が指名されており、独立リーグの選手が上位指名されるのは石森大誠(2021年ドラフト3位)以来で、2位指名に関しては又吉(2013年ドラフト2位)まで遡る。

 

ではなぜ、ここにきて独立リーグの指名が増えた、脚光を浴びたのか背景を考えていこう。

 

指名された独立リーグの選手の特徴

先述したドラフト2位で大谷輝龍(ロッテ)、椎葉剛(阪神)に加え育成ドラフトで指名された大泉、松原、芦田のように、社会人野球チームを戦力外になった、もしくは野球と社業の両立の困難により社会人チームを退団し、独立リーグのチームに入団し活躍したという経緯の選手が多い。

 

オープン戦やJABA大会を除き、基本的に負けたら終わりの社会人野球において、球は速いけど制球難等課題があり、いわゆる長所もありながら安定感に欠けた尖った選手が使いにくいという背景があって、出番を貰えず退社した選手もいる等、社会人野球向きではなかったが独立リーグで長所を伸ばし、才能を開花させたパターンも多い。

周知の通り、独立リーグの場合、社会人野球と違い高卒でも今回指名された日渡や谷口のように、1年目からNPBのドラフトで指名することができるので、1シーズン在籍しプロ注目の存在になるまで結果を残せれば、若くしてNPB入り出来る可能性がある。

独立リーグのチームは社会人野球チーム在籍の選手と違い、順位縛り等制約もなく、育成契約でも指名することが出来るのが大きなアドバンテージといえる。

 

今年のドラフトのトレンドの大学生投手も1位候補こそ多いが、2位指名以下だとがくっと質が落ち、なんと今年は育成指名もなんと昨年の3分の1である7名に終わっている(順位縛り等絡んでいそうな感じはある)。そうした市場背景も独立リーグ人気を加速させた背景があり、来年以降も今年の流れを踏襲するかというと違うと思われる。

 

そのあたりを踏まえ、前述したような尖っているけれど才能が有って若い選手が多く独立リーグから指名があったのが、今年のドラフト特有の特徴といえる。

 

 

NPBを目指す選手が社会人野球に進むことが本当に正解なのか

 

今年のドラフトで、NPBより社会人野球チームからドラフト指名された選手は14名。社会人野球豊作年とされた2017年の24名と比較すると10人も減少した。

そのうち解禁済選手が4名。(森田、糸川、又木、石黒)

少しずつではあるが、年々解禁年に指名される選手が減っている印象を受ける。

 

少し脱線したので本題に戻すと、世間一般的に「社会人野球に行けばある程度安泰が保証されていて、独立リーグに行くと生活が厳しいので、社会人野球からプロを目指した方がいい」という印象を持たれがちだが、果たして本当にそうなのか考えていく。

 

確かに、独立リーグの場合、リーグによって若干差はあるものの、だいたいの相場として月給10万程度で収入的に厳しく、野球以外のアルバイトを掛け持ちしながら生計を立てている選手が多数いて、故障した場合無給になる等厳しい条件でプロ入りを目指している選手も少なくないのが現状で大前提としてあることを先に触れておく。独立リーグNPB入りを目指すのではあれば、金銭面、時間の使い方含め自己管理が大事になる。

 

社会人野球も実態は厳しい

社会人野球チームに入れば、「戦力外通告もなく何年も野球でき、引退しても社業専属で残る安泰が保証されている」という印象を持たれがちだが、実際は違う。

 

実は、必ず正社員で採用してくれるわけではなく、採用時に契約社員でしか採用してくれない企業も存在する。

大谷や椎葉らを例に前述した通り、入ってみたら社業との両立に追われ野球にかけられる時間がない場合も企業によってはあるし、戦力外通告も世間に広まっていないだけで毎年行われており、社業専念で残る選択を出来ず会社を去ることになる選手も少なくない。

入る前に事前にこの辺り条件面を確認できればこうしたミスマッチを防ぐことはできるのだが、こうした実情は我々の就職活動と同じく、なかなか出回らないので、難しい部分もある。

 

そのような環境で大学生は2年間、高校生は3年間社業と野球を両立させた上で、先にいるチームメイトとの熾烈な争いの果てにレギュラーを勝ち取り、NPBから注目され指名を勝ち取るレベルにまで成長しないといけない。

 

もともと学生時代からプロ注目の実力こそあれど、課題克服できず、スケールも変わらないまま2年ないし3年が経過し指名漏れするケースも体感増えているように感じる。社会人野球で個々がどう成長していくかビジョンのないまま入ってレギュラーにはなれたものの、そこで止まって成長できていない選手が多いのではないか。

勿論、そうした選手が解禁年に指名漏れし、悔しさをバネにスケールアップをし後々指名されるケースもあるので、チャンスがないわけではない。

解禁年に指名される選手は年々減り、近年は阿部(オリックス)を筆頭に、今年の森田(巨人ドラフト2位)のような解禁済の選手の指名も増えているにはいるが、安泰を確保しながらNPB入りを目指すには果たして本当に社会人野球がいいのかは再考の余地があると思わされたドラフトだった。

 

 

高校生一塁手スラッガーというジャンル

近年投高打低が進むNPBにおいて、若くて沢山本塁打の打てる選手は人気カテゴリになるのではないかという見立ても多い中、今年のドラフトでは例年にない位高校生一塁手スラッガー野手に対しての評価が厳しかった。

 

BIG3と呼ばれ、2年生から注目された佐々木麟太郎、真鍋慧、佐倉が誰一人支配下で指名されず、高校通算50本塁打近く打っている一塁手スラッガータイプの高校生打者が明瀬(日本ハム4位)まで指名されなかったのは予想出来なかった出来事であった。

なぜそうだったのか個人的に考えている理由が主に2つ。

 

1つ目が

高校生でも、ファーストしか守れないのは厳しい

今までだと清宮幸太郎(現日本ハム)が7球団競合した2017年ドラフトのように、高校生時点でのポジションが一塁手メインの選手でもホームランを量産出来ていれば上位指名確実だった立ち位置の選手が、今回指名漏れ、下位指名となった。

 

それは近年プロ球団の高校生に対する見切りが早くなっていることが影響していると考えられる。

ここ数年は高校生でもある程度体が出来上がった選手が多く、伸びしろがないと判断されれば、3年で戦力外になることも珍しくない。

 

そんな中で一塁手しか守れないとなると打席を与えて短期間で一軍で出れるレベルまで育成するのも出場機会を与える上で難しく、よほど打てないと厳しいものがある。

ファーストしか出来ない→打てないと厳しいという事で、今回のドラフトは飛距離を生み出せる選手が指名されたように感じている。

 

もう一つが

佐々木麟太郎という目玉を失い、大学生投手が脚光を浴びたため

佐々木麟太郎という数年に一度レベルの傑作がアメリカの大学へ進学を選択し、目玉が大学生投手へすり替わってしまったことにより、相対的に市場価値を下げてしまったのではないかという説で、ドラフトはウェーバー順から逆算して他球団に先に取られないように欲しい選手から獲得して行く傾向になりやすく、同じジャンルからの指名が立て続けに行われがちで、今年の場合大学生・社会人投手中心に上位指名が展開され、佐々木麟太郎という目玉を失ったのは非常に大きかった。

 

阪神のドラフト舞台裏を映した動画で、ホワイトボードに「真鍋」が上位指名候補の欄に書かれていたのに、実際指名がなかったのはこうした球団各々が優先する事項と指名の成り行きによるボタンの掛け違いだったと思われる。

ドラフトは相対評価で決まると思わされた出来事だった。

 

 

以上、今年のドラフトの今までとの相違点の個人的な解釈でした。

読んでいただき、ありがとうございました!