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高校野球あれこれ 第108号

今を輝くプロ野球選手たちの高校時代【オリックス編】 コロナ禍に翻弄された怪物右腕とスラッガー、そしてWBC左腕

 
 

新型コロナウイルスの猛威が吹き荒れた2020年、山下は高校3年生だった 

 第105回目を数える夏の甲子園大会へ向けて、高校球児たちがすでに熱い戦いを繰り広げている。今回は彼らの「先輩」であるプロ選手たちの高校時代にスポットライトを当てる。
 セ・パ12球団別に選手3名ずつをピックアップし、甲子園での活躍を振り返りたい。今回はオリックス編だ。今をときめくスター選手の高校時代を振り返るとともに、ぜひ先輩たちの後を追いかける高校球児の活躍もチェックしてほしい。

山下舜平大:福岡大大濠(福岡)

 唸りを上げる平均150キロ超のストレートを武器に今季大ブレイク中の右腕だが、高校時代に甲子園のマウンドは踏むことができなかった。

 福岡大大濠で1年秋からベンチ入りするも、決して絶対的な存在ではなかった。上背こそあったものの肉体的に未完成でメンタル的な弱さも目立った。だが、2年秋からは徹底的に体力作り、フォーム修正に取り組んで大きく進化した。だが、最終学年を迎えるとともに新型コロナウイルスが蔓延し、甲子園が中止に追い込まれるだけでなく、全国の部活動の例に漏れず、チーム練習すら禁止される事態となった。

 それ故に、山下の実力はベールに包まれていた。それでも3年夏の福岡県の独自大会でスケールアップした姿を披露し、決勝の福岡戦で延長11回タイブレークの末に敗れたが、延長でも151キロを計測して周囲を驚かせた。さらにプロを目指す高校球児たちを対象にNPB高野連がタッグを組んで8月末に行われた『プロ志望高校生合同練習会』でも150キロ超のストレートを繰り出し、「キャッチボールからモノが違う」、「将来性抜群の大型右腕」、「ドラフト1位間違いなし」と太鼓判を押されることになった。

 ドラフト1位指名でオリックスに入団した山下は、高校時代の実績不足もあって「未完の大器」と言われたが、2軍での2年間を経て迎えた3年目の今季、自身のあふれる才能を開花させている。コロナ禍で奪われた時間と味わった悔しさを自らの成長の糧とし、活かしたと言える。

 今年の福岡大大濠は、強打の捕手・藤田悠太郎(3年)を司令塔に春の県大会で優勝を果たした。西日本短大付九州国際大付など強豪校が揃う激戦区を勝ち抜き、1989年以来の夏の甲子園を目指す。

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来田涼斗:明石商(兵庫)

 2021年に高卒新人史上初となるプロ初打席初本塁打のド派手なデビューを飾ったスラッガーも、コロナ禍の影響を大きく受けた。だが、同学年の山下と異なる点は、この男の場合は2年夏までの甲子園に3季連続(2018年夏、2019年春、夏)で出場して確かな実績を残したことだ。

 甲子園初登場となった1年夏は、1番打者として4打数2安打と大物の片鱗を見せたが、チームは初戦敗退となった。その後も核弾頭として働き、2年春は4試合を戦って打率.357(14打数5安打)をマーク。準々決勝の智弁和歌山(和歌山)戦では1回裏に先頭打者アーチを放つと、9回裏には小林樹斗(現広島)のストレートを捉えてサヨナラ本塁打を記録した。

 続く2年夏も同学年の中森俊介(現ロッテ)、1学年上の水上桂(現楽天)らとともに3季連続で甲子園出場を果たし、ベスト4に進出した。来田は4試合で打率.353(17打数6安打)をマークし、試合には敗れたが、準決勝の履正社(大阪)戦で自身甲子園通算3本目のアーチを放った。

 本来ならば3年時も春夏連続出場が濃厚だったが、春は出場が決まっていながら中止となり、夏は交流試合での1試合のみ。チームとして全国優勝を狙える力を備えており、来田個人にとっても甲子園通算本塁打1位の清原和博(13本)は難しくても、2位の6本塁打桑田真澄元木大介、中村奨成)の更新は十分に可能だっただけに心残りではある。

 その“想い”は後輩たちに託された。今夏の兵庫大会は、センバツ準優勝の報徳学園神戸国際大付も迫る。2回戦から登場する明石商は、7月11日に初戦を迎える。

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宮城大弥:興南(沖縄)

 WBCにも出場した球界屈指の左腕は、1年時と2年時に2年連続で夏の甲子園(2017年夏、2018年夏)のマウンドに上った。

 1年春からベンチ入りし、背番号11を付けて臨んだ1年夏は主戦として沖縄県大会を勝ち抜き、甲子園でも1回戦の智弁和歌山(和歌山)戦に先発した。相手の3番には2年生の林晃汰(現広島)がいたが、初回に第1打席で三振を奪うと、3回の第2打席では投手ゴロ併殺打に仕留め、3回まで無失点投球を披露する。しかし、4回裏に味方エラーの後に3本のヒットを許して2点を失うと、続く5回に林に2ランを浴びてマウンドを降り、チームも6対9で初戦敗退となった。

 続く2年夏は背番号13だった。そして1回戦の土浦日大(茨城)戦で8回から2番手で登板し、2イニングを1安打4奪三振1失点の好リリーフを披露する。続く2回戦の木更津総合(千葉)戦では、5回途中から登板して3回1/3イニングを4安打4四死球と制球を乱して3失点(自責1)。チームも0対7で敗れて上位進出はならなかった。

 そして背番号1で高校生活の集大成として臨んだ3年夏は、県大会決勝で沖縄尚学との延長13回の死闘の末に、最後は押し出し四球で決勝点を与えて涙を飲んだ。それでも県の全6試合に登板して46イニングを投げて61奪三振を圧巻のピッチングを展開したことで、U-18侍ジャパン入り、そしてプロ入りへと繋がった。

 今年の沖縄大会はすでにベスト4まで進んでおり、興南ウェルネス沖縄、宮古沖縄尚学の4校の争いとなっている。興南も平山航多(3年)、田崎颯士(2年)と宮城と同じサウスポー2人の評判が高く、センバツ出場の沖縄尚学、初出場を狙うウェルネス沖縄が優勝候補に挙げられている。