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高校野球あれこれ 第170号

春に評価上げた「高校生のドラフト候補」 新たに浮上した選手、下級生には“来年の目玉”候補も

 

春季大会で浮上してきた選手について、下級生も含めてピックアップしてみたいと思う。

 

選手の中で評価を上げた印象を受けるのが小船翼(知徳・投手)と石塚裕惺(花咲徳栄・遊撃手)の2人だ。小船は3月30日に行われた地区予選の御殿場西戦では151キロをマークし、18奪三振で2失点完投。続く県大会初戦の浜松城北工戦では体調が万全ではなかったとのことだが、それでも県内公式戦の高校生歴代最速に並ぶ152キロを記録し、14奪三振で完封という圧巻の投球を見せている。198cm、110kgという日本人離れした体格でこれだけの出力があり、三振を奪えるというのも魅力だ。スケールの大きさでは今年の全カテゴリーの投手の中でも屈指と言えるだろう。

 

一方の石塚は4月4日から行われたU18侍ジャパンの強化合宿で木製バットながら柵越えを連発。春の県大会でも5試合で17打数10安打、ホームラン1本を含む長打4本と反発力の弱い新基準の金属バットの影響を感じさせないバッティングを見せている。長打力と確実性を兼ね備えた打撃は今年の高校生の中でもトップと言える存在だ。ショートの守備も華麗なタイプではないが堅実で、脚力と肩の強さも備えている。将来の中軸候補が欲しい球団には垂涎の存在である。

 

前回の記事で名前を挙げていない中からも、評価を上げてきた選手は少なくない。投手では昆野太晴(白鴎大足利)と井上剣也(鹿児島実)の2人を挙げたい。昆野は昨年秋もエースで4番として関東大会に出場しているが、この春は投手に専念して安定感がアップ。県大会の準々決勝、佐野日大戦では最速150キロをマークし、8回を投げて被安打2、11奪三振で無失点の快投を見せた。

 

少し左肩の開きが早いのは課題だが、上半身も下半身もたくましく、力強い腕の振りは抜群。最速が速いだけでなく、コンスタントに145キロを超える出力の高さがあり、佐野日大戦は11個の三振全てが空振りと、ボールの質の良さも目立つ。5月18日に開幕する関東大会でも高い注目を集めることは間違いない。

 

井上も九州大会で最速151キロをマークして注目を集めた本格派右腕。身長は175cmと投手としては上背がある方ではなく、少し上半身が強いフォームは気になるものの、出力の高さは大きな魅力だ。変化球の精度や、投球術がレベルアップしてくれば、さらに評価を上げる可能性は高いだろう。

 

野手では龍山暖(エナジック・捕手)と斎藤大翔(金沢・遊撃手)の2人がこの春浮上してきた。龍山が所属しているエナジックは今年が創部3年目ながら、春の沖縄県大会で優勝。九州大会では初戦で優勝した明豊(大分)に敗れたものの、0対2と善戦している。龍山の魅力は何よりもその肩の強さで、2.00秒を切れば強肩と言われるイニング間のセカンド送球で、明豊戦では最速1.80秒をマークした。タイムだけでなく、ボールの勢いも圧倒的なものがあり、視察したスカウトからも肩だけなら高校ナンバーワン捕手と見られている箱山遥人(健大高崎)を上回るという声も聞かれるほどだった。九州大会では7番だったが、普段は中軸を打つ打撃もパンチ力があり、積極的に次の塁を狙う走塁も魅力だ。

 

斎藤は北信越で注目を集めているショート。特に脚力は抜群で、8.00秒を切れば俊足と言われるツーベースの二塁到達タイムは右打者ながら7.78秒を記録している。流れるようなフットワークと、速くて正確なスローイングも高校生とは思えないレベルにある。打撃は少しリストの強さに頼り過ぎて引っ掛けることが多いのは課題だが、昨年夏の石川大会で3本塁打(うち1本はランニングホームラン)を放っているようにパンチ力は申し分ない。春の県大会では準々決勝で日本航空石川に延長戦の末に敗れて北信越大会出場を逃したが、ホームランを含む3安打を放ち存在感を示した。

 

 2年生の投手では健大高崎の佐藤龍月と石垣元気がセンバツで目立ったが、彼ら以上に評価を上げてくる可能性がありそうなのが宮内渉吾(中京大中京)と福田拓翔(東海大相模)の2人だ。宮内は193㎝の大型右腕で、昨年6月に行われた花巻東との招待試合では佐々木麟太郎(米・スタンフォード大)からも三振を奪っている。当時から140キロを超えるスピードをマークしていたが、この春は149キロまでスピードアップ。順調にいけば来年の東海地区を代表する右腕となるだろう。

 

福田も入学直後から140キロ台中盤のスピードをマークして注目を集めた右腕。この春の県大会でも準々決勝で強打の桐光学園を相手に先発して6回を投げて10奪三振、2失点の快投でチームを勝利に導いている。宮内は東海大会、福田は関東大会でもそのピッチングに注目してもらいたい。

 

東北や北海道では公式戦が本格化するのはこれからであり、まだまだここから浮上してくる選手も出てくるはずだ。夏、そして秋のドラフトに向け、また新たな逸材が飛び出してくることを期待したい。