センバツの開幕まで1か月あまり。先月27日の選考会で、近畿勢は名門校、伝統校の名が次々と呼び上げられた。近年の甲子園では大阪桐蔭を中心とした近畿勢の活躍が目立っている。今春も近畿勢は強く、好選手も多い。中でも報徳学園(兵庫)は投打に戦力が充実し、昨秋は大阪桐蔭に肉薄した。

名門・報徳の堀は驚異のセカンド送球

 名門を牽引するのは捕手で主将の堀柊那(しゅうな=2年)。前チームから主力として活躍し、全国屈指のポテンシャルを誇る。セカンド送球は最速で1秒81。この数字は、高校生としては全国トップクラス。プロで最速と言われるソフトバンク甲斐拓也(30)が最速1秒71とされ、高校生で1秒9を切る選手は全国でも数えるほどしかいない。捕手としての目標を「甲斐さん」と言う堀は、「今年中に1秒8を切りたい」と話す。

バットでは出塁にこだわる

 バットでは高校通算13本塁打の長打力よりも、「出塁にこだわる」と話す。

近畿大会でも打ちまくった堀。堀が出て4番の石野(蓮授=2年)が返すパターンで主導権を握る。大角監督は「下位もしぶとい」と得点力に手応えをつかんでいる(筆者撮影)
近畿大会でも打ちまくった堀。堀が出て4番の石野(蓮授=2年)が返すパターンで主導権を握る。大角監督は「下位もしぶとい」と得点力に手応えをつかんでいる

 中学時代(兵庫・夙川ボーイズ)時代には、今季、阪神のコーチに就任した水口栄二(54)から指導を受け、「ヒジを内側から出すように」とアドバイスされたら、打てるようになったと言う。水口氏と言えば、高校時代に夏の甲子園で29打数19安打、打率は驚異の.655と打ちまくり、プロでも球界屈指のミート力で名を馳せた。ちなみに堀は、昨秋の近畿大会4試合で17打数10安打で打率.588と恩師に迫り、甲子園では「水口さんの記録を抜きたい。打順も1番か3番がいい。走塁も自信があるので盗塁もどんどん仕掛ける」と、チームではチャンスメーカーに徹するつもりだ。

高校ナンバーワン捕手と認められる活躍を

 守りの要としての捕手の役割については、捕手出身の大角健二監督(42)から、「キャッチングはもちろん、投手のリズムを大切にするように。返球一つとってもリズムがある」と厳しく指導されている。最も自信を持つのがセカンドへの送球で、「肩は自信があるし、盗塁はされたくない。甲子園では阻止率10割をめざす」と力がこもる。将来は「走攻守、三拍子揃った捕手で、甲子園では高校ナンバーワン捕手と思ってもらえるような活躍をしたい」と大舞台での飛躍を誓った。

本当は『野生児』と大角監督

 取材をした印象としては、名門の主将としての落ち着きと自信が感じられ、そのことを大角監督に伝えると、「本当はあいつ『野生児』なんですよ」と意外な答えが返ってきた。

大角監督(中央)は、報徳で春夏4回の甲子園出場。3年時は主将も務め、センバツでは松坂大輔の横浜(神奈川)に初戦敗退だった。立命館大でも主将だった人格者で、名門復活の期待を受ける(筆者撮影)
大角監督(中央)は、報徳で春夏4回の甲子園出場。3年時は主将も務め、センバツでは松坂大輔の横浜(神奈川)に初戦敗退だった。立命館大でも主将だった人格者で、名門復活の期待を受ける

 新チームスタート時は誰を主将にするか迷ったようで、主将が重荷になったか、県大会では打撃も守備もスランプに陥っていた。大角監督は「あまり主将ということを意識しなくていい。皆でチームを支えていくから」と励まし、堀の良さである「荒々しさ」が戻るよう腐心した。

甲子園では大阪桐蔭に負けたくない

 近畿大会では本来の「荒々しさ」を発揮して打ちまくり、大阪桐蔭に次ぐ準優勝。しかし結果に満足はしていない。自身も肝心の大阪桐蔭戦は4打数無安打で、「前田(悠伍=主将)君に、ヒットも出なかった(チームでわずか3安打)し、塁に出てからも完全に封じられた」と潔く負けを認め、「同じ相手には絶対に負けたくない」と闘志を燃やす。「1点にこだわって、チャンスで回ってきたらタイムリーを打ちたい」と、甲子園での再戦を熱望していた。